AIのパワーによってアプリはより〝粘着性のあるもの〟に
その戦略において、イーミンとバイトダンスの味方は多くなかったが、トウティアオにユーザーを引き込むことには成功した。2012年8月の公開から3か月で、トウティアオは1000万人のユーザーを獲得した。
ユーザー数は増え続け、ユーザーがアプリを開いている時間もどんどん増えていき、毎日1時間以上になっていた。
さらに、AIのパワーによってアプリはより〝粘着性のあるもの〟、つまりより関わり合いを深め、ユーザーを夢中にさせることができるものになるとイーミンが気づいたことから、アプリ内でのあらゆる操作が追跡され、次回の体験をさらに楽しめるよう利用されている。
ユーザーがコンテンツ内をどうスワイプしているか、どこをタップしているか、記事をスクロールし、どこで手を止めているか、利用の時間帯はいつごろか、どこで使っているか、といった情報を活用したきわめて有効な改良体系で、トウティアオをさらに魅力的なものにしている。
スマホで使えるAI搭載アプリが未来に続く道
「大学を卒業後、取り組んだものが検索エンジンであれ、ソーシャルネットワークサイトであれ、そのすべてが情報流通に関わるものだったのです」。イーミンは出身大学の学生たちにそう語っている。
「検索エンジンは情報流通を系統立てたものであり、ソーシャルネットワークサイトは人々を情報の流れのノード(ネットワークの接点)にして情報の流れを系統立てるものであり、レコメンデーションエンジン(おすすめ機能)はユーザーの関心を捉えてうまく活用し、情報流通をより細かく体系化している」と彼は話す。
つまり、バイトダンスの企業としての発展のコアとなっているのは、イーミンがその考えを心に刻みつけた創造、推奨、情報流通なのだ。彼は社内に効率工学部門を設け、組織内のコミュニケーションの流れを改善している。
イーミンはスマホで使えるAI搭載アプリが未来に続く道だと気がついた。
しかも、彼にはそれらを発展させるための財政的支援もあった。トウティアオが成功したおかげで、投資家がバイトダンスへの投資に群がった。寝室が4つのアパートから始まった会社にとって、それは驚くべき成功である。
わずか10平方メートルたらずの寝室のいずれかをその時々のミーティングルームとして使い、初期のバイトダンスの従業員たちは家具の合間にひしめきあっていた。
トウティアオの公開から1年もしないうちに、イーミンはすでに、AI搭載モデルなら世界を相手にできるだろうと話していた。経営陣に対しては、明確にこう宣言している。
「バイトダンスは商業化と国際化に挑む」つもりだと。2013年1月に経営陣向け資料のスライド24で提示された未来への4部構成のプランにおいて、パート4は英語圏のユーザーを獲得するためにトウティアオの英語版を構築するプランである。
当時、スマホユーザーの注目を奪い合い、競争が激化していた。動画ビューアアプリの競争だ。
文/クリス・ストークル・ウォーカー 翻訳/村山 寿美子 写真/shutterstock
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