たとえ木村拓哉でも……
そんな勉強熱心なシェリーさんでも、テレビドラマを観ることがある。
「好きな俳優はキムタク(木村拓哉)!」
シェリーさんはそう言って笑った。これまでで一番かわいい笑顔だった。
「もし、もしもよ。そのキムタクがシェリーさんにアプローチしてきたら?」
シェリーさんの庶民的な部分を垣間見ることができたようで嬉しくなった私は、すぐに質問を重ねたが、
「まずは友達としてご飯」
と、シェリーさんらしい返事が冷静な口調で返ってきた。たとえ、木村拓哉さんのようにかっこいい男性でも、
「顔いいね、くらい。景色と一緒。そんなもん」
と、再びバッサリと切られてしまった。やはり、シェリーさんが恋をする日はかなり遠そうだ。では、もし将来、同じ研究者がアプローチしてきたら、シェリーさんはどうするのだろう。私はすこしポジティブな望みを持って尋ねてみた。
「お金が少ない」
その言い方は、特にクールだった。
「研究者はずっと研究しているから他のものに興味が行かないし、自分の世界を大切にするから人と話が合わない」
この言葉は、男性研究者からシェリーさんにそのまま返されても不自然でない気がした。シェリーさんはさらに続けた。
「お金が少ないのはダメですが、お金を持っていても、頭のよくない人もダメです。お金と頭、両方ないとダメ」
シェリーさんの瞳には、一分の揺るぎも見られなかった。最後に、私が不謹慎だが、
「頭と性格はあまりよくなさそうだけど、お金を持ってる人なら日本には大勢いるんだけど……」
と茶化すと、
「年上の……? あ、イヤッ。絶対ダメです」
大きな前歯を見せて笑うシェリーさんが、私にはとても愛らしく思えた。男性を知ることによって、シェリーさんがこれまで頑固に貫いてきたものが、もしかしたら壊れてしまうかもしれない。そんなイメージが浮かんできた。
海外に住んでまで研究に力を注ぎ、頑張っているシェリーさんがステキだから、私は、このまま彼女らしく生き抜いてもらいたい──と、心のなかでエールを送った。
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文/家田荘子