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ギャンブルが原因でホームレスに

厚労省が2022年に発表した「ホームレスの実態に関する全国調査」によると、全国で確認されたホームレスの数は3448人だった。ちなみに、「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」、および「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」では、「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」がホームレスと定義される。調査方法は「市区町村による巡回での目視」なので、曖昧さや認知バイアスなども考慮に入れなければならないが、ほかに資料が見当たらないので、この数字が現状を示していると考えたい。

約3500人という数字が多いかどうかの判断は難しいが、日本国憲法第25条では、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と「生存権」が保障されている。定住地、定職を持たず、社会保障など「国民のだれもが持っている権利」さえも放棄しているのだから、人数の多寡は別にして、ホームレスはすべて「わけあり」と考えていい。

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国内でホームレスへの支援をしてきた「ビッグイシュー日本」共同代表の佐野章二さんは、長年の経験からこう断言する。

「ホームレスになってしまう最大のきっかけは、借金からの逃亡。とくにギャンブルが原因である割合が大きい」

1991年に英国で生まれた雑誌『ビッグイシュー』は、月2回、発行されてきた。それを翻訳したものを日本版として刊行。2003年から街角でホームレスが1部450円で販売して、1冊の売り上げのうち230円のインセンティブ(歩合)が売り手の手元に残るモデルをつくり上げた。東京や大阪の繁華街などでは、道端に立ったまま雑誌を掲げている人を見かけることがある。

これまで日本では累計で900万部以上が売れ、労働対価としての収入機会を提供することで、ホームレスの自立を支援してきた。もちろん、全員がギャンブル問題を抱えているわけではない。それでも、数えきれないほどのホームレスと向き合ってきた佐野さんはこう訴える。

「人間の当たり前の生活を破壊する可能性には、職場での人間関係、恋愛、アルコール、薬物などさまざまあります。でも、たちまちのうちに、1人の人間、一つの家族を完璧に崩壊させてしまう可能性があるのがギャンブルと薬物です。そもそも、借金してまで酒を飲む人はいないからね」