「ゴミ屋敷チルドレン」と呼ばれる子供たち
しかし、メディアがいくら報道を控えたところで、こうしたゴミ屋敷がなくなるわけではない。外からわかるようなゴミ屋敷だけでなく、ドアを開けてみると玄関からベランダまで物が散らばっていて足の踏み場がない家もある。
多くの場合、本人はさほどゴミ屋敷であることを気にしていない。ゴミの中で普通に過ごすことができるのだ。だが、彼らに家族――特に子供がいた場合は、事情が異なる。あまり注目されないが、「ゴミ屋敷チルドレン」と呼ばれるような子供たちは一定数存在するのだ。
そんな1人が近藤明音(仮)だ。明音の両親はともに発達障害があったそうだ。父親はあまり家に帰ってこず、たまに姿を現したと思ったら意味不明のことを言いつづけるようなタイプで、母親はしょっちゅう体調が悪いと言って寝室にこもっていた。
明音が物心ついた時から、マンションの自宅には大量のゴミが散乱していたそうだ。母親がまったく片づけができない人間で、体調のいい時は町に出て不要なものをあれこれ買いあさり、翌日にはそれらを床に放ったらかしにして見向きもしない。そうやってどんどんものがたまっていくのだ。
明音は言う。
「お母さんは外に出ていったと思うと、お店で同じような靴下とかバンダナを20も30も買ってきて、床に置きっぱなしにするんです。私が『こんなに要らないでしょ』と言っても、本人は必要だと言って聞かない。でも、家に帰ってくると、買ったことすら忘れて放ったらかしにする。計画的に何かをするということができないみたいです」
こうした傾向は生活そのものにも当てはまったそうだ。
「家では電気もガスもしょっちゅう停まっていました。私が『お母さん、(未納分を)払ってよ』と言うと、『わかった』と答えるんですが、支払いに行く前に別のことをやりはじめてしまっているんです。食事だってそうです。
食材を買ってきて作りはじめても、途中で違うことをはじめるので中途半端なまま終わってしまう。食事が完成して食べられるのは1週間に1回あるかないか。なので、私はお腹が空いたら、食材を生のまま食べていたか、給食でお腹を満たすかしていました」