僕を狂喜させた、インディーズバンドチラシの集積本

最近買ったある本に、大変な感銘を受けてしまったので紹介したい。
『CHIRASHI』(2022年3月31日発売 SLOGAN・刊)という本である。

『CHIRASHI』。定価は本体3900円+税
『CHIRASHI』。定価は本体3900円+税

東京・高円寺にあるレコード店、Record shop BASEによって著されたこの本は、「Tokyo Punk & New Wave '78-80s チラシで辿るアンダーグラウンド・ヒストリー」という副題どおり、1978年から1984年にかけて配られた、パンク&ニューウェーブ系アーティストのライブ告知チラシを集積したビジュアルブックだ。

クレジットを見ると、掲載されているそれらのチラシは、制作した当人、つまり当時のバンドのメンバーやレーベルの協力を得て集められていることがわかる。
A4の大きな判型で480ページある大冊をめくっていくと、チラシ1枚だけが掲載されているページもあれば、2〜4枚がレイアウトされているページもある。
特に解説などはつけず、年代順にただひたすら並べられた無数のチラシは圧巻で、そういうバンドが心から好きな僕は時間を忘れてひたすら眺め、思いを巡らせることができる。

『CHIRASHI』を開く筆者。藁半紙のような紙質も、当時のチラシの感じをうまく再現している
『CHIRASHI』を開く筆者。藁半紙のような紙質も、当時のチラシの感じをうまく再現している

本書の解説として、著者であるRecord shop BASEの飯嶋俊男氏が書いているように、現在は“フライヤー”という小洒落た呼び名が定着しているライブの開催を告知するための配布物は、かつては“チラシ”や“ビラ”と呼ばれていた。

SNSどころかインターネットすらなかった当時、一般メディアでは取り上げられることの少ないアンダーグラウンドなバンドの情報をファンが知る手段は、バンドがみずからの手で作成し、ライブハウスなどで配っていたこうしたチラシしかなかったのだ。

パソコン自体が一般には普及していなかったから、チラシは手書きやインレタと呼ばれるシートを使った文字、それに雑誌などから抜き出して切り貼りした既存の活字を使い、手描きイラストや写真を組み合わせて作られ、一般的なコピー機で複製されていた。
DIY精神あふれるそうしたチラシは一種のアート性を帯びるとともに、バンドの熱量がダイレクトに感じられ、受け取った者の血をグツグツとたぎらせるパワーがあった。
僕も好きなバンドのチラシを受け取ると、ライブ当日まで穴が開くほど何度も見返していたものだ。
そして僕のような阿呆はライブ後も捨てられず、何十年経っても保存していたりする。