山上被告に「恋愛」経験はあったか

五野井 山上被告の恋人問題について私は違う解釈を持っています。彼に彼女がいたのかどうか、あるいはそれを「恋愛」と呼べるのかどうか、確かに池田さんがおっしゃるような「成熟した恋愛」ではなかったかもしれません。池田さんよりも年下の人の恋愛は、もっとプリミティブかもしれません。恋愛ではない人付き合いも幼稚になってきています。

しかし、山上被告はやはり「恋愛」をしていたと思います。山上被告がフェミニストの人とツイッターでやりあっているときに、彼はキリスト教のアガペーの愛も含めて、恋愛は性愛のことのみを意味するのではないと言っていました。彼と「恋人」とがどういう関係であったかはわかりませんが、しかし「恋人」関係は成立していたのだろうと私は思っています。
 
池田 彼は人との純粋な関係を求めていました。しかし自己責任論などもあってその関係に乏しかったと思います。彼はそこに引き裂かれていたということを考えると、いたたまれない気持ちになります。

山上徹也被告のツイートにはなぜ「女」が頻出するのか? 新自由主義とカルトに追い詰められた“ジョーカー”の全1364ツイートを読み解く_4

五野井 そうですね。彼がインセルのポジションに見えてしまうことがあります。彼はそうなりたくてなっているのではなくて、そういうポジションにさせられてしまっている部分がかなりあったのではないでしょうか。

彼はツイートで、「この人達(フェミニストたち)は異性からの愛が皆無でも今の自分があったと言えるのだろうか? インフラなんだよ。一定以上豊かに生きるための。これを理解しない限りキリスト教的素地のない日本人は行きつく所まで行く。愛は必ずしもセックスを意味はしない」と言っています。この言葉を読む限り、異性からの愛は彼にとってあったんでしょう。しかしそれが性的な関係であったかはわかりません。

こうした議論は重要だと私は思っています。なぜなら山上被告のツイートには本当に「女」「女性」という単語が多く出てきます。旧統一教会だけが彼を苦しめていたのではなかったのでしょう。研究によれば、日本の男性の場合、年収が600万円を超えると子どもを持つことが容易になるそうです。結構大変ですね。ロスジェネ以降の世代の人たちにとっては、特にコロナ禍以降、子どもを持ち家庭生活を営む条件が大変、難しくなっています。山上被告と同じような悩みを抱えている人はいっぱいいるはずです。

もちろん、山上被告はフェミニストに対してものすごい罵詈雑言を浴びせるような、インセルだ、ミソジニーだと言われても仕方がない書き込みもしています。