空手道場に住み込み。厳しい内弟子時代

すっかりパチスロにハマった中竹さんは、次第にアルバイトを休みがちになり、自分が支払えない額の借金をつくって、家族に肩代わりしてもらうことが度々起きた。

中竹さんが19歳になった頃、自堕落な生活を続ける息子を見かねた両親が頼ったのは、小学校の時に通っていた空手道場の館長だった。道場で指導して、息子が真っ当な人間になれるように更生を依頼したのだ。

「館長はかつて喧嘩に明け暮れていた人で、地元のヤンキーの間では名の通った存在でした。めちゃくちゃ強くて恐いので、これは言うことを聞くしかないと思って。それで道場に通い出しました」

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館長の内弟子という立場で、更生に向けた日々が始まった。当初は実家から道場に通っていたが、内弟子の決まりに反して道場が閉まった後に夜遊びを繰り返していたことが館長に知られると、道場への住み込みを言い渡された。

内弟子としての生活は厳しいものであったが、中竹さんは格闘技の世界はそういうものだと信じて、日々の生活に疑問を持つことはなかったという。

練習は厳しいが、実力は着実についていった。空手道場ではキックボクシングも教えており、中竹さんはこちらをメインの競技とした。やがて道場が主催する自主興行試合のリングに上がるようになる。これがキックボクサーとしてのキャリアのスタートであった。しかし、未来のチャンピオンはデビューの直後に挫折を経験している。

「初戦の試合は勝利を飾れたのですが、2戦目は負けました。それで、一気にやる気がなくなってしまって道場を飛び出したんです」

行き先は当時交際していた彼女の家であった。そこで9か月の間、匿ってもらいアルバイトをしながらパチスロをして過ごしていた。しかし、些細なことで喧嘩になり、彼女の家からも出て行ってしまう。