「コカインを売りさばくのは、クラブ」

カルロスは9歳で来日しているので母国にツテがほとんどなかった。そのため、日本にいる「家系」のBと仲良くなった。そして何年間かBの密売を手伝ったり、別のシノギを一緒にしたりする中で信頼関係を築き、祖国のAと取り引きすることを認めてもらった。

日系人ギャングが語るコカインの単価、隠し方、送り先、売り方…。「ヤクザは覚醒剤、不良のガキどもは大麻、俺ら日系人が扱うのはコカインって住み分けができてる」。_3
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具体的には、カルロスが「家系」の元締めのAに連絡をして先払いで現金を渡す。すると、Aがコカインを日本に送ってくる。カルロスはそれを日本国内でさばく。おそらく、Aはカルロスから得た金を仲介料としていくらかBにも渡しているだろう。カルロスは言う。

「コカインはぼろ儲けだよ。1グラム2500円くらいで買って、それを2万円から3万円で売る。約10倍の儲けだ。『家系』の奴らは、世界中にコカインを流しているので、どこの国ではどうやればいいってことがわかっている。
送る時の最新の隠し方も把握している。日本の場合は100グラム以内なら荷物の中にうまく紛らして送れば問題ないと考えていたみたいだ。送り先も民泊予約サイトをうまく使ってやる」

問題は、コカインが送られてきても、どこに隠されているかは教えられていないということだ。荷物を受け取ったカルロスは、自分で荷物の中からコカインのありかを探さなければならない。

一番困ったのはシャツが送られてきた時だった。どこを切り刻んでも白い粉は出てこない。そこで「家系」に相談し、ある加工をして電子レンジで温めてみたところ、白い粉を手に入れることができたという。

「コカインを売りさばくのは、クラブだな。日本人はシャブや大麻が好きだけど、クラブに出入りする連中はよくコカインをやるんだ。あとは、日本にいる日系人もよく買いに来る。
裏の世界では、ヤクザが扱うのは覚醒剤。不良のガキどもが扱うのは大麻、そして俺らが日系人が扱うのはコカインってきちんと住み分けができている。お互いが他の領分を侵さなければ衝突することもない。
むしろ、俺らがコカインを売っている時に覚醒剤がないかと尋ねられてヤクザを紹介するとか、逆にヤクザが俺らを紹介するってこともあるくらいだ。ガキの時は日本人とぶつかっていたけど、今は仲良しだな」