支援員は教師に比べ立場が弱い
3月14日の記事公開後、「集英社オンライン」には複数の保護者や学童支援員関係者からの情報が寄せられた。今回は関東近郊のある政令指定都市で学童保育に携わっている元放課後支援員のAさんにインタビューを敢行。A子さんは現在、学童保育の現場ではなく、放課後支援員の教育や指導に携わっている。
「現場はもう崩壊しています」そう語るベテラン支援員が明かすリアルな学童の実態を詳報する。
——「#学童落ちた」と嘆く保護者の声が後を絶ちません。都心と比べて地方の学童保育は足りていますか?
数だけで言えば、東京と比べて十分に足りています。ただし、地域差が大きい。たとえば田舎でも小学校一校の子供の数は、地域によってかなり差があってまちまちです。
過疎化の学校は全校生徒が100人程度。地方でも、都市部の中心部になれば1校500人の学校もよくあります。
——地方の学童保育室の特徴は?
地方では、学校の空き教室を使っている学童が多いんです。少子化で児童の数が減ったことで、空き教室が出る。だから、学校の教室を使いなさいとなったわけです。でも、異なる年齢の子供を1つか2つの教室に、100人とか120人とかいう単位で入れると、当然ですが異常事態が起こってしまう。
視聴覚室のようなちょっと広めの特別教室に50人~60人ずつに分けたとしても、普通はそんなに子どもを詰め込んで授業は行いません。でも、学童保育の場合、それが常態化しています。
——いつから学童保育室は“すし詰め状態”に?
ここ10年ぐらいで、私はぐっと進んだなとは思っています。それまでは公民館など、独立した別の建物で学童の授業が行われていたこと多かったですね。地方は待機児童ゼロの地域もあると謳っていますが、定員オーバーでも小さな教室に押し込めば、そりゃ待機児童はいなくなりますよ。
——公民館で行われていた学童は行政から補助金が降りる「放課後児童クラブ」を指す?
そうです。地方都市も公設でやっていたんですけど、地方は少子化のあおりを受けて、独立した施設は、学校に吸収されてしまった。それと行き帰りの心配が出てきたこともあって、校内でやるっていう風習に変わってきたわけです。
——親からすると、やっぱり安心なのも背景にある?
学童の先生たちも送り迎えしなくていいので、仕事が減った。今までは施設まで学校から離れていたので、迎えに行ったりしていた。それが、学校の施設を使わせていただいている状態になるので、現場としては自由度がすごく低い。例えば、先に授業を終えて学童にきても下級生は上級生の授業が終わるまで、部屋で静かにしないといけない。
——学校によっては、体育館や校庭も開放してくれるのでは?
それは校長の判断です。校長と相談して決める。学童保育の子が例えば体育館を使って何か問題を起こすとしましょう。それで学校が「もう体育館は使わないでくれ」って言ったら、それから何年間も使えなかったりする。そうなると子供たちは部屋にいること以外やることがない。仮に室内で思いっきり遊ばせでもしたら、先生から「いい加減にしてください」と教師に怒られてしまう。支援員は教師に比べ立場がかなり弱いです。
——部屋では何をして遊ぶ?
ボードゲームの類、宿題、折り紙。あと同じようなDVDをひたすら繰り返しで見ていたりします。本当にかわいそうです。子供たちも思考停止しています。