年々下がる、退職金受給額

たとえば、地域に密着したマッサージ師や工務店の職人など、一見すると富裕層とは結びつかない職業の人が亡くなり、その家族が相続税を申告しているケースを私は少なからず見てきました。

こうした人たちの共通点は、「定年がない」ことにあります。私が目にした富裕層の方々は、会社員や公務員が定年を迎える年齢を過ぎても、なんらかの形で収入を得ていました。

事業収入や、企業の相談役としての報酬、講演料などを得て、同年代の人たちよりも多く稼いでいたのです。

中小企業庁の調査を見ると、個人事業主や会社経営者の廃業年齢は70 歳代に集中しています。80歳を超えても仕事を続けている人もそれなりの割合でいるのです。

もちろん、お金が足りずに長く働いている人もいると思いますが、定年のある会社員よりも長く働くことで、多額の資産を築いている人も少なからずいると考えられます。

今は、かつてなく老後が長くなっている時代です。その一方で、企業の退職金は年々減少しています。厚生労働省がとりまとめた「就労条件総合調査」によると、大卒者の定年時の平均退職金額は、次のとおり推移しています。

大卒者の定年時の平均退職金額
2003年:2499万円
2008年:2280万円
2013年:1941万円
2018年:1788万円

このような時代において、たとえ高収入の仕事に就いたとしても、65歳頃に定年退職をして無収入になると、亡くなるまでに財産を使い切ってしまうおそれがあります。

富裕層でなくても、なんとか老後の生活費を確保するためには、定年のない仕事をし、定年世代以上も仕事を続ける。

健康に気をつけながら、できるだけ長く働く。これが人生100年時代における1つの戦略といえます。