「もうダメかも……」と思うときが何度もありました

衝動に突き動かされたMEGUMIは、監督のマネージャーと意見交換しながら、製作委員会の組成に向けて奔走する。

「トントン拍子にはいかず、『もうダメかも……』というときが何度もありました。そのたびに竹中さんと『やりましょうよ!』とお互いに励まし合い、支え合って。

そしたらハピネットファントム・スタジオさんや日活さん、いろんなところが参加してくださったんです」

プロデューサーとして、脚本、キャスティング、ロケハン、衣装合わせなどすべての作業に携わった。

意識したのは「竹中監督が、一番いい状態で撮影できるようにすること」とMEGUMIは振り返る。

「竹中監督の頭の中には、『キャストはこの人』とか、『ロケ場所はここがいい』とか、超具体的なアイデアが、いっぱいあるんですよ。

それをスタッフみんなで具現化していった感じでした。うまくハマらなかったときは、『最近、この方もすばらしくて』と別の役者さんを提案したり、『こっちの画のほうがいいんじゃないですか?』と別のロケーションを相談したり。

難航した脚本作業では、『女性に見てもらうには、こういうセリフがあってもいいのではないですか?』と意見を言ったりもしました。

私は、それが採用されても却下されても、どっちでもいいんです。私の仕事は、監督の足を一回止めて、考えていただく時間をつくること。

試行錯誤して、構築して、また破壊する。それを繰り返してつくり上げることが大事なんだろうなと思っていました」

自身も主人公の妻で漫画編集者の町田のぞみ役でキャスティングされた。

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「漫画家の編集担当の方にインタビューをさせていただいたら、本当に“女房役”なんですよね。生活に必要な買い物をし、お金の振り込みなんかもして、子どもの受験に付き添ったり。

コンディションのいいときも悪いときも全部受け入れて、ときには励まし、ときには軌道修正して、作品づくりに向きあってもらう。

のぞみもそんな母性がある、キャパの広い人だと捉えて撮影に臨みました」