演者として最も好きなセリフ
では、演者として最も好きなセリフは何かと聞くと、「ラストでゲンが生まれたばかりの赤ん坊の妹を抱き上げるときの言葉です」と即答し、暗誦してくれた。
「もう二度とこんなことはさせんぞ、絶対にさせんぞ、わしが仇とってやるんじゃ。わしの力で戦争なんかないええ世の中にしちゃる。そうしてお前が大きうなる頃にはかあさんもお前もわしもいつも一緒におられて、飯が腹一杯食えるようにするんじゃ、わしゃお前を守っちゃるでー」
「私たちは次世代へのゲンにならないといけない。今の政権が矛盾しているのは、攻撃されたら危険だから防衛の準備をすると言いながら、最も狙われたら危険な原発もどんどん再稼働や増設をしようとしている。
にもかかわらず司法もあてにはなりませんし、マスコミも批判をしようとしません。もはや時代の空気はゲンが生まれた大政翼賛会や大本営の時代に近いのではないでしょうか」
ならば、この時代に生きる者も日々、問われているのではないか。作品の登場人物になぞらえるならば、我々は拷問すら恐れずに軍部を批判したゲンの父親の道を選ぶのか、それとも我が身可愛さから、戦争に反対するものを非国民として攻撃した鮫島町内会長に依るのか。
教育に対する政治の介入が止まらない現在、香織は37年分のゲンへの敬意を込めて、これを生涯語り続ける決意をかためている。
取材・文/木村元彦 写真/共同通信社
2023/4/1 『漫画「はだしのゲン」の継承について、漫画と講談が訴えていること』
ゲスト 神田香織さん
開催日 2023年4月1日 土曜日
時間 14:00~16:00
会場 大阪府立男女共同参画・青少年センター(ドーンセンター)
詳細は隆祥館書店ホームページより