ハコが狙う“キレイな情報”とは…?
ハコに入るのはどのような人物なのか。
「自分がいたことのあるハコの中では、山口組系や住吉組系といった組員や関東連合のメンバーなどが仕事をしていた。ハコに入れば代紋や組織の違いなんて誰も気にしてない。ノルマ達成に向けて頑張るだけだ」
さらに、使い捨ての取り子(受け子)と違い、こういうハコに入るにはある程度のネットワークが必要なのだという。
組員のところには「今でも特殊詐欺に関連する闇バイトの募集が頻繁にくる。タタキの募集もたくさん来るね。そういう募集で流れてくるのは“キレイな情報”だ」という。
“キレイな情報”とは何なのか。組員は説明する。
「振り込め詐欺のターゲットをうまく騙せたら、その家に行ってお金を回収する必要がある。しかし、その過程でめくれる(警察にバレる)ことがある。たとえば3時までに銀行の窓口に行かせて、500万円をおろさせ、4時に家に取りに行く約束をしていたら、めくれた家はその時間には警察が張っているので、ハコの連中は取り子をわざと行かせない。
取り子が現れなければ警察は引き上げるが、ターゲットの手元にその500万円は残る。すぐに近くのATMで金を戻せばいいが、数百万円という大金だと何度も操作をする必要がある。詐欺にあったばかりでATMの前に立つのも不安だし、その後に大金を持って歩くのはもっと嫌だ。だから、翌日に銀行の窓口でその金を預けようとする。
そこで預けられる前に、その家に空き巣か強盗に入るチームを、ハコに潜む特殊詐欺グループがつくるというわけだ。こういう情報を“キレイな情報”という。
実行犯とハコにいるグループの報酬の取り分は空き巣なら『6:4』、強盗なら『8:2』。強盗の実行犯は罪が重いのでそれだけ取り分も多くなる」
特殊詐欺とそれに絡む空き巣や強盗はこのようにつながっている。
過去の事件の中にも、同じような手口で渡邉容疑者ら特殊詐欺グループが実行犯を操っていたケースもあるかもしれないのだ。
取材・文/島田拓
集英社オンライン編集部ニュース班