ハコの中では代紋や組織は関係ない
マニラに滞在していたこともあるというその組員は「マニラでは、儲けている者ほどボディガードが必要だ。そこまでの金がなければ、遊びに行くにも常に“危険”がつきまとう。道端を歩いていても、タクシーに乗ってもどこでも、日本人のタタキがフィリピン人のタタキにあうということだ。タタキで奪った金をフィリピン人のタタキにたたかれる。
ボディバッグなどに入れて出かければ金は絶対に取られる。ボディガードがいなければ、金は靴下に押し込んで出るしかない」と話す。
渡邉容疑者が五つ星ホテルに滞在していた理由も、優雅な生活を送るというだけでなく、危険回避の意味もあったのかもしれない。
渡邉容疑者は2019年に、マカティの廃業したホテルを3億円で購入している。4年の分割払いで購入という話もあるが、マニラに詳しい暴力団幹部は「たいがい誰かが金を出している」という。
その年の11月には、このホテルを拠点とする日本人特殊詐欺グループ36人が逮捕された。しかし、そのうち渡邉容疑者を含む数十人のメンバーが摘発を逃れていたことがわかった。このような特殊詐欺グループが拠点として使う場所を“ハコ”と呼ぶ。
幹部は「絶対にバレないという自信があったんだろう。人出のない廃墟みたいなホテルに、電話線を何本もつなげれば、誰だっておかしいと思う。そこでバレなくても、結局誰かがしゃべるんだ」
今回の渡邉容疑者が指示する連続強盗事件の報道が過熱するあまり、過去のハコ摘発についても掘り返されているが、「特殊詐欺の拠点であるハコを押さえたといっても、たかだか1~2か所のこと。フィリピンには他にもハコが腐るほどある」とその幹部は話す。