イタリア映画らしさとは地域毎に異なる美しい景色。旅するように美しいイタリアを楽しめる、風土を味わう名画10選_3
Album/アフロ
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『ベニスに死す』(1971年)Morte a Venezia
上映時間:2時間11分/イタリア=フランス=アメリカ
監督:ルキーノ・ヴィスコンティ
出演:ダーク・ボガード、ビョルン・アンドレセン、シルヴァーナ・マンガノ

ヴィスコンティの「ドイツ三部作」の1本で、ドイツのトーマス・マンの同名小説をもとに、ヴェネツィアのリド島の名門ホテル、「オテル・デ・バン」(現在休業中)を一カ月借り切って撮影した。海岸で縞の水着を着て走り回る少年タジオと彼を愛して追いかける中年の音楽家のすれ違いを描く。

随所に流れるマーラーの交響曲5番は、スウェーデンのオーディションで選ばれた美少年ビョルン・アンドレセンと共にこの映画でたちまち有名になった。


『1900年』(1976)Novecento 
上映時間:5時間16分/イタリア=フランス=西ドイツ=アメリカ
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
主演:ロバート・デ・ニーロ、ジェラール・ドパルデュー、ドミニク・サンダ

1970年の『暗殺のオペラ』と『暗殺の森』でイタリアのファシズム期の虚構をシンボリックに構築してきたベルトルッチは、この映画で同じ時期を中心に描きながらも1900年から1975年までの北イタリアのエミリア・ロマーニャの農村の歴史を絵巻物のように見せた。

中心となるのは1900年に生まれた地主の息子アルフレード(デ・ニーロ)と農民のオルモ(ドゥパルデュー)。1945年にファシストたちを追い出した農民たちが継跡だらけの大きな赤い旗を持って走るシーンは忘れられない。


『カオス・シチリア物語』(1984)Kaos 
上映時間:2時間37分/イタリア
監督:パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ
タヴィアーニ兄弟は劇作家ピランデッロの短編集から5つのエピソードを選んで3時間7分のオムニバス大作を作った。舞台はピランデッロが生まれたシチリアのジルジェント(現アグリジェント)で、明るい太陽のもとで滑稽で悲しい物語が展開する。

最後のエピソードで故郷に帰ったピランデッロは亡き母と再会する。真っ白い砂丘から青い海に向かって駆け降りる少女たちの姿の鮮烈なことといったら。



『輝ける青春』(2003)La Meglio Gioventù 
上映時間6時間5分/イタリア
監督:マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督
出演:ルイジ・ロ・カーショ、アレッシオ・ボーニ、マヤ・サンサ、アドリアーナ・アスティ

ローマのカラーティ家の人々の1960代後半からの半世紀を描いた大作。もともとテレビ用に作られたが、カンヌに出品されて話題を呼び劇場公開が決まった。中心となるのは兄ニコラとマッテオの兄弟で、彼らはフィレンツェの大洪水の救助に向かう。

ニコラはトリノ大学で医学を学び、学生運動に参加する。姉はシチリアで検事をしており、機動隊員となったマッテオも転勤でシチリアへ行く。このほか、トスカーナ地方やストロンボリ島などイタリア各地でロケがされており、20世紀後半のイタリアの歴史と共にイタリア各地の風景をたっぷり味わえる。

イタリア映画オールタイムベスト10選はこちらから

文/古賀太 

永遠の映画大国 イタリア名画120年史
古賀 太
イタリア映画らしさとは地域毎に異なる美しい景色。旅するように美しいイタリアを楽しめる、風土を味わう名画10選_4
2023年2月17日発売
1,100円(税込)
新書判/256ページ
ISBN:978-4-08-721254-9
【豊かな映画文化はなぜ生まれたのか?】
『無防備都市』『自転車泥棒』『道』『8 1/2』『情事』『山猫』『荒野の用心棒』『木靴の樹』『ニュー・シネマ・パラダイス』『ライフ・イズ・ビューティフル』『君の名前で僕を呼んで』……。数々の名作を生み、日本でも絶大な人気を誇るイタリア映画。
アメリカやフランスに比べて、その文化の全容が語られる機会は少ないものの、世界の映画史に大きな影響を与えてきた。本書ではイタリア映画の歴史を、19世紀から現代までの120年を、約800の作品とともに通覧。「イタリア映画祭」を立ち上げた著者がその豊かな文化的土壌と、映画の本質を明らかにする。
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