●富山(千葉・房総半島)
「富山」と書いて「とみさん」と読みます。南峰と北峰のふたつのピークをもつ山で、三浦半島の山々から房総半島を眺めたときにはよく目立つ存在です。南峰は木々に覆われていて、眺めがよいのは北峰のほう。草原の広場となっていて、その一角に木造の展望台が立てられています。
たいした高さはなくすぐに登れますが、海に近い場所だけあって、眺望は申し分なし。水平線の向こうに伊豆半島、富士山、大島などの伊豆諸島が眺められます。展望台には見えている景色をイラストで起こした解説板もあります。
JR内房線の岩井駅から、福満寺を経由して山頂を目指します。丸太の階段などがあり、整備されて歩きやすい道です。照葉樹の森を楽しみながら、ゆっくり足を進めましょう。登山口へは、高速バス「房総なのはな号」を利用してアクセスすることもでき、その場合はハイウェイオアシス冨楽里が最寄りのバス停となります。
富山は、江戸時代の名作、滝沢馬琴の長編小説「南総里見八犬伝」ゆかりの山としても知られています。山の中腹には、登場人物の伏姫と八房が暮らしたという伏姫籠穴(ふせひめろうけつ)があります。下山後に立ち寄ってみてもよいでしょう。
【データ】
推奨ルート:岩井駅〜福満寺入口〜富山〜往路を戻る〜岩井駅
※伏姫籠穴~富山の登山道は4月末現在、通行禁止
歩行時間:約3時間
難易度:★★☆
アクセス:JR内房線岩井駅下車
今回紹介の山はいずれも「登山初心者向け、難所なし」のコース……とはいえ、未舗装の山道を歩くことになりますので、動きやすく汚れてもいい服、歩きやすい履き慣れた靴でお出かけください。飲み物やおやつ、汗ふきタオルや雨具などの荷物をデイパック(小型リュック)に入れていきましょう。帰りに温泉に行くなら温泉セットもお忘れなく。
オーシャンビューを楽しむなら、早朝出発が定石です。暖かくなる春から初夏にかけては、午後になると雲が出たり霞がかかったりして、遠くの景色が見えづらくなります。気温が低めの、午前中の早い時間のほうが、遠くの景色がきれいに見渡せます。
早朝からゆっくり歩いて景色を楽しみ、早めに下山したら地元の美味しいものを味わったり、温泉に立ち寄ったりしてくださいね。山歩きに足を運んでそれだけで帰るのはもったいない。地元のいいものにたくさん触れて帰りましょう。
それではみなさま、よい山旅を。
文/西野淑子
写真/石丸哲也