地元で有名な「ヤリマン」

高校2年の時、A子は後輩との子供を妊娠する。彼女は母親に怒られるのを恐れて黙っていたため、人工中絶が可能な時期を過ぎてしまった。A子は高校を中退し、出産したが、相手の男は他市へ逃げてしまった。

若くして未婚の母となったA子だが、実家に暮らすことは許されなかった。実家では母親が3姉妹とは別に、別の男との0歳と4歳の子供をつくっていた。母親は弁当屋のアルバイトで5人の子供を食べさせていたため、A子と孫まで養う余裕がなかったのだ。

A子は実家を出て、叔母の家で暮らすことになった。だが、この叔母がとにかく金に対して強欲で、A子に対してこう命じた。

「私が赤ちゃんを預かるから、あんたは稼いで金を全部うちに入れなさい」

A子は夜明け前から夕方までファミリーレストランで働き、子供を保育園から引き取った後は、深夜1時過ぎまでコンパニオンの仕事をした。そうして稼いだ金はすべて叔母に奪われた。ここでも彼女のイエスマンの性格が出たのだろう。

男たちの性欲の捌け口とされ、産まれたばかりの子を殺した女が逃れられない実母の呪縛「刑務所を出たら、お母さんと暮らしたいです。だって、お母さんとは…」_2

こうした性格は、職場でも彼女を苦しめる。コンパニオンの仕事で出会う男たちが、A子の性格を見抜いて次から次に肉体関係を迫ったのである。A子は高校時代と同じようにそれに応えた。やがて彼女は地元では有名な「ヤリマン」と呼ばれる女性になった。

数年の間に、彼女は複数回にわたって人工中絶をしたり、やむなく子供を産んだりする。短期間、言い寄ってくる男と籍を入れたことがあったが、まったく働かない人間だったために離婚。叔母の家を離れて、実家に戻った後も、母親から叔母同様に「生活費を入れろ」と脅され、稼いだ金はほとんど奪われた。母親はその金で外食したり、東京ディズニーランドへ遊びに行ったりしていたらしい。

そんな彼女のストレス発散方法は夜の仕事の際に酒を飲むことだった。毎晩記憶をなくすくらい酒を口にしては、群れてくる男たちの欲望のはけ口にされる。彼女はもう自分が何をしてどこへ向かっているのかわからなくなっていた。

1件目の事件が起こるのは、そんな時だった。