「今は応援なんてできないとはっきり言いました」五輪メダリスト“中年の星”山本博が「商業五輪」に思うことを読む

「招致よりも、まずはちゃんとした組織委員会をつくるのが先」

60歳になった“中年の星”山本博が語る五輪と年齢の壁。「『還暦』をネガティブにとらえちゃいけない。僕は今後も若い子たちとハンデなしで戦いたい」_1
今年還暦を迎えたが、いまだバリバリのトップアスリートだ
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東京オリンピック・パラリンピックをめぐる汚職事件は、合わせて約2億円が賄賂と検察に認定され、大会組織委員会の元理事で電通出身の高橋治之被告と、大勢の企業経営者らが、東京地検特捜部に起訴され、捜査は一段落した。

しかし、今度はまた、東京オリンピック・パラリンピックのテスト大会をめぐる入札談合疑惑で、複数の広告代理店や企業の捜査が進み、全容解明が進められている。その中で動いていた2030年冬季オリンピック・パラリンピックの札幌市への招致活動に、山本は「反対」の意思を示していた。

「税金を使って開催するイベントを利用して、一部の人間が私腹を肥やしていたわけだから、そういうことが二度とできない仕組みづくりをした上でなきゃ、札幌市民や国民は招致を受け入れないでしょ。なのに招致の手助けをJOC(日本オリンピック委員会)がしているのはおかしいよ。

招致が決まったら、すぐに組織委員会が立ちあがっちゃうでしょ。東京オリンピック・パラリンピックで起きたことをまず清算して、日本がちゃんとした組織委員会をつくれることを示すのが先でしょう」

この言葉を追認するように、12月20日、札幌市とJOCは招致活動の当面休止を発表。大会組織委員会のガバナンス体制を検討し、広告代理店への委託業務のあり方を見直す方針も示した。

山本は商業主義がスタートした1984年ロサンゼルスオリンピックで初出場し、大金が注ぎ込まれるようになったオリンピックを間近で見てきた。

「1992年のバルセロナオリンピックの頃には、僕みたいな一選手にも、『IOC(国際オリンピック委員会)のサマランチ会長が大会期間中は高級ホテルの最上階を貸し切っている』とか、お金が一部の人のところに集まっているという話が耳に入ってきていた。

だけどみんな、ずっと見て見ぬふりをしてきたんでしょう。そういうことを指摘したら、自分たちの懐にも入ってこなくなりますから。

マスコミだってこれを叩かなかった。そもそもマスコミがスポンサーになるのはおかしいよね。今になって高橋被告の問題だとしてたたいているけど、本当はIOCやJOC、組織委員会の問題でしょう。なのに誰も責任取らない。組織委なんて解散しちゃっているし。本当に一過性のイベントは恐ろしいよね」