きっかけは選択肢が少なすぎる女子野球の現状

明治大学女子硬式野球クラブを創部したのは、元消防士で現在同大に学生として通う藤﨑匠生監督、25歳。

藤﨑さんは元高校球児。女子野球に関わりを持つきっかけは、2019年に母校の高知中央高校(高知県高知市)に女子野球部ができたことだった。部をつくった西内友広さんは、高校時代の野球部の恩師。西内さんから「外部コーチになってほしい」と声をかけられた藤﨑さんは、消防士として働きながら休日や仕事終わりに手伝いにいくようになった。

「野球は男子のスポーツ」「女子の選択肢が少なすぎる」を変える。東京六大学初の女子硬式野球部をつくった明大生たちの挑戦‗01
明治大学女子硬式野球クラブ監督の藤﨑匠生さん
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高知中央の女子野球部は県内外から集まった10人でスタートした。そして1期生にとって最後の夏となる2021年8月に、初めて甲子園で行なわれた全国高校女子野球選手権に出場。決勝戦まで勝ち進んだ。

外部コーチとして就任した当初は「女子野球はあまりレベルが高くないだろう」と思っていたという藤﨑さんだったが、甲子園でプレーする彼女たちの勇姿に胸を打たれた。

「僕も野球をやってきましたが、甲子園にはいけませんでした。甲子園は出たくてもお金では買えないですからね。彼女たちが甲子園という舞台でどんどん成長して強くなっていく姿を見て、まさに『お金では買えない価値』に心が熱くなり、さらに女子野球に貢献したいと思うようになりました」

生徒たちから進路相談も受ける中で、「女子が大学進学後も野球を続けるには選択肢が少なすぎる」(藤﨑さん)現状に直面した。

そこで、学生野球の原点であり、歴史と伝統のある東京六大学に女子野球部をつくることができれば、女子野球界が発展していくはずだと考えた。そこで自ら明大を受験し、消防士をやめて学生として女子野球部の創設に関わろうと決めた。

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明大女子硬式野球クラブのメンバー。左からスタッフの平野太康さん、影山唯花さん、助川仁美さん、高林奈々さん、マネージャーの林穂美さん

藤﨑さんは入学前の2022年3月頃からSNSを駆使して部員の勧誘活動をスタート。志岐有香さん(3年)も、このSNS投稿を目にして明大女子硬式野球クラブに入部を決めたメンバーのひとりだ。

「私は小学2年から6年まで野球をやっていて、中学・高校ではソフトボール部。大学入学後は他の文化系サークルに入っていました。ツイッターで大学に女子野球クラブができるというのを知ったときは『やりたい!ラッキー!』って思いましたね。新しいコミュニティができるのも楽しみでしたし、大学でまた野球ができるうれしさがありました。

高校時代の友達はまさか私が大学で野球をやっているとは思わなかったようで、明治女子野球部のインスタグラムを見つけた友人から『めっちゃ似てる人写ってるけど』って連絡が来ました(笑)」(志岐さん)

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志岐有香さん

藤﨑監督と学科が一緒で、学内で“スカウト”されたという冨田梨紗さん(1年)は中学・高校とソフトボールの経験者。

「大学では運動をする気はなかったんですけど、藤﨑さんとたまたま話す機会があって『ソフトボールやってたんです』って言ったら、『女子野球、興味ない?』って。それで入ってみようかなと思いました」(冨田さん)

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冨田梨紗さん