“坂本&丸”が抜けても常勝継続

“メジャー最強”アストロズはどのくらい強い?「山本由伸がいる阪神投手陣」「吉田正尚が9人並ぶ打線」_1
アストロズの大エース・バーランダーは、39歳ながら今季18勝、防御率1.75でリーグ2冠に輝いた。通算勝利は現役最多の244勝ながら、ワールドシリーズは7試合で0勝6敗となぜか未勝利
すべての画像を見る

レギュラーシーズン106勝、ポストシーズン7戦全勝と完全無欠の強さを見せつけ、ワールドシリーズまで駆け上がってきたヒューストン・アストロズ。2019年に発覚した「サイン盗み問題」の影響で米球界のヒール役となってしまったが、球団史上初めてワールドシリーズを制覇した2017年から6年連続でア・リーグチャンピオンシップシリーズへと進出。紛れもなく、“メジャー最強”の常勝軍団だ。

2011年からの3年間で106敗、107敗、111敗を記録するなど“メジャー最弱”の時期もあったが、新オーナーがデータを活用したチームづくりに着手し、数年で黄金期をつくりあげた。そのサクセスストーリーは、最下位から2年連続リーグ優勝を成し遂げた高津ヤクルト、中嶋オリックスの姿とも重なり合う。

アストロズが並の球団でないのは、ワールドシリーズを制したときのコアメンバーがFAで数人去ったあとも黄金期を継続しているところ。巨人でいえば、坂本勇人や丸佳浩が抜けるようなものだが、無理に大枚をはたいて引き留めず、若手や補強選手がその穴を補って余りある活躍をみせている。

今季の年俸総額は全30球団中10位の1億6387万ドル(ちなみに、大谷翔平が所属するエンゼルスは1億6858万ドルで9位)。39歳の大エース、バーランダーには惜しみなく投資し、主力のアルトゥーベらとはフェアバリュー(適正価格)で契約。さらに若手を的確に発掘、抜擢。阪神がロベルト・スアレス、渡邉雄大、加治屋蓮らを再生させたように、他球団でくすぶっている投手をデータに基づいて改良させることも得意だ。

そんなアストロズを率いるのが73歳の名将、ダスティ・ベイカー監督。その温厚な人柄で、「サイン盗み問題」によってダーティなイメージがついてしまったチームの雰囲気を一変させた。采配面でも有能コーチ陣と連携し、配球、走塁、フレーミング、タッチプレーなど細部に至るまで突き詰めている。相手がされて嫌なことをし、相手がしようとすることを先につぶす。洗練された“なめらかな野球”こそ、アストロズの強さの神髄といえる。