「全米女子アマチュアゴルフ選手権」(以下、全米女子アマ)は、参加申し込みに年齢制限はなく、ハンディキャップインデックスが3.4以下であれば、あらゆる国籍の女子アマゴルファーがエントリーできる。シンプルに“今、世界で最も強い女子アマゴルファーを決める大会”となっている。
大会の創設は1895年。男子の全米アマ、全米オープンそれぞれの第1回大会に続いて開催され、122回の歴史を誇る。全米女子オープンは1946年創設なので、こと歴史と伝統に関しては、全米女子アマが圧倒的だ。
今大会は、世界アマチュアランキング上位者ら132名が出場した。競技方式は、初日、2日目は36ホールのストロークプレーが行われ、上位64名がトーナメント方式の決勝ラウンドへ進出する。決勝ラウンドのマッチプレーは3日目(1回戦)、4日目(2回戦、3回戦)、5日目(準々決勝)、6日目(準決勝)までは18ホール、7日目の決勝戦は36ホールのマッチプレーという過酷なものだ。
馬場はストロークプレーを34位で通過し、マッチプレーは1回戦1アップ、2回戦3&1、3回戦3&1、準々決勝4&3、準決勝7&6と尻上がりに調子を上げていった。決勝戦では21歳のモネ・チュン(カナダ)を11&9(※9ホールを残して11アップ)という圧勝で、7日間142ホールを戦い抜いてチャンピオンに輝いたのだ。弱冠17歳で恐るべし、としかいいようがない。

全米女子アマ優勝の大快挙! 17歳・馬場咲希のトップクラスの武器と勝ちまくりのキャリア
17歳の馬場咲希(日本ウェルネス高2年)が、アメリカ・ワシントン州ユニバーシティプレースのチェンバースベイGCで開催された「全米女子アマチュアゴルフ選手権」で優勝した。日本人選手の優勝は、1985年の服部道子(プロゴルファー、2020年東京五輪女子ゴルフ日本代表コーチ)以来37年ぶり2人目の快挙となった。馬場の軌跡や大会の歴史をたどり、大快挙の“すごさ”を探る。
日本の17歳による歴史的圧勝

全米女子アマの優勝トロフィーを抱く馬場咲希 写真/Kyodo News
歴代優勝者は「キラ星」ばかり
全米女子アマは、歴代の優勝者にもキラ星のような女子ゴルフファーたちが連なっている。最近では、2007年に「クラフト・ナビスコ選手権」で当時の女子メジャー史上最年少(18歳10ヶ月)優勝を飾ったモーガン・プレッセル(アメリカ、2005年優勝)や、2021年の東京五輪では稲見萌寧とのプレーオフに敗れたものの銅メダルを獲得したリディア・コ(ニュージーランド、2012年優勝)もいる。リディア・コはアマチュア時代に130週連続でアマチュア世界ランキング1位に輝き、さらにプロ転向後には2015年の「エビアン選手権」で、プレッセルのメジャー最年少記録を破る18歳4ヶ月で優勝している。
他にもLPGAツアー通算31勝(うちメジャー7勝)をあげたジュリ・インクスター(アメリカ、1980年・81年・82年優勝)など、名プレーヤーを挙げればキリがない。
37年前、初めての日本人チャンピオンになった服部も日本女子アマ3勝、日本ツアー通算18勝、1998年には賞金女王獲得など大活躍している。

写真/Kyodo News
全米女子アマ以前から勝ちまくり
そんなキラ星列伝の最新ページに名前を刻んだ馬場は、日本ウェルネス高2年。東京都出身で、5歳からゴルフを始めた。2018年「東京都ジュニアゴルフ選手権」(12~14歳の部)優勝、2019年に「関東ジュニアゴルフ選手権」(12~14歳の部)優勝、2021年「全国高校ゴルフ選手権」優勝、2022年には「関東女子ゴルフ選手権」や「関東ジュニア選手権」(15~17歳の部)優勝など、とにかく勝ちまくり。
プロトーナメントにも挑戦しており、今年の「ブリヂストン・レディースオープン」ではベストアマを獲得。日本での最終予選会を突破して「全米女子オープン」にも出場した。渋野日向子、古江彩佳らが予選通過を逃す中、決勝ラウンドに進み、49位に入った。
プロでもトップクラスの飛距離
そんな「世界最強女子アマ」の馬場の武器は、175センチの長身から繰り出す平均270ヤードをかっ飛ばすドライバー。この飛距離はプロでもトップクラスだ。
「今まで優勝した中で一番。やばいです。本当に信じられない」と優勝インタビューで語っていた馬場。今回の優勝で2023年の「全米女子オープン」、「AIG全英女子オープン」の出場を決めた。さらに2023年4月に開催される「オーガスタナショナル女子アマチュア」の出場の可能性も広がった。
この先、いったいどれだけの「すごいこと」をしてくれるのか、本当に楽しみだ。
文/志沢 篤
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