《古田敦也×上田晋也》古田も太鼓判!現役投手では山本由伸しか投げていない唯一無二の球種とは?
野球界のレジェンド古田敦也に、大の野球好き芸人、くりぃむしちゅーの上田晋也が監督から選手、プロ野球の未来まで、他では聞けない秘話を語り尽くした『Q上田A古田 プロ野球で活躍する逸材とは?』(ポプラ社)よりWBCでも大活躍した山本由伸投手のすごさについて一部抜粋、再構成してお届けする。
なぜ、石川雅規は小柄で180勝以上も挙げられるのか?
古田 ヤクルトの石川(雅規)君は、40歳を過ぎても現役でやっていますが、彼は入団当初はストレートとスライダー、チェンジアップの 3種類しか投げることができませんでした。彼は身長が170センチないものの、183 勝もしていて、2022年も6勝していますから〝すごい〞の一言です。

現役時代には捕手としても監督として石川投手をリードしていた古田さん
大学時代にエースとして活躍した石川君が入団してきたとき、僕はいきなり「こんなレベルの 3種類じゃ絶対プロじゃ抑えられへんぞ」と、ダメ出ししたことがありました。すると後日、彼は「何を覚えたらいいですか」と素直に聞 いてきたので具体的にアドバイスしたら、毎年新しい球種を必ず覚えてくるようになりました。
上田 なるほど、そういった努力があるから、長年コンスタントに勝ち星を重ねて来られたんですね。

テレビのスポーツ番組の司会も務め、野球大好きな上田さん
古田 そうですね。彼にはほかにも「お前のチェンジアップ(シンカー)さ、プロじゃ誰も振ってくれないよ」と言ったこともありました。そのときも、すぐどうしたらいいのか質問してきたので、もう少し速く投げられないかとアドバイスしました。そしたら、開幕近くには、速いシンカーが投げられるようになっていました。
遅いシンカーだけだと、プロは振ってくれませんが、速いシ ンカーも投げられるようになると、遅いシンカーが活きるんです。速いシンカーかなと思ってスイングしにいくと、もっと遅いシンカーだったために空振りをしてしまうわけです。球種が 1種類増えただけで、キャッチャーのリードの幅がぐんと増えて、一気に抑えられるようになります。
石川君には、毎年、カットボールがあるといいなとか、リクエストしていました。彼は、ほかの人の助言に対して素直に取り組む選手だったので、長い間プロの一線で活躍できるわけです。
速くてよく曲がる山本由伸のカーブ
上田 一番ストレートが速かったピッチャーは誰ですか。
古田 速さでいうと横浜の(マーク)クルーンです。ストレートの伸びでいうと阪神の藤川(球児)君です。彼のボールは、オールスターゲームともう1回くらい受けたことがありますが、空振りが取れるかどうかは置いておいて、バットに当てても前には飛ばないようなストレートでした。
クルーンのストレートは、少しシュート回転する、僕らで言う〝球が汚い〞ストレートなのでバットには当たります。ただ、キャッチャーからしたら捕るのは難しいです。内からバーンッて伸びてきて、伸びるというのはどういうことかがわかるストレートでした。
上田 カーブは誰がすごかったですか。
古田 カーブは、好みがありますが、緩い、曲がりがでかいのは、中日の今中(慎二)君や、巨人の桑田(真澄)君などですね。
上田 今中さんのカーブも確かに大きかったですよね。
古田 オリックスの星野(伸之)君も緩かったです。キャッチャーの中嶋(聡)君が、素手で捕ったという逸話がありました。コントロールがよくて、あんな緩さでよくストライクを取れるなというようなカーブでした。
上田 現役のピッチャーでは誰がいいですか。
古田 山本(由伸)君でしょう。彼のカーブは、昔でいうとドロップなんですが、縦にビュンッと曲がります。じつは、昔のマウンドというのは、今の倍くらいの高さがありました。たしか1990年くらいまでのピッチャーはカーブがよく曲がっていました。なぜなら、低い位置から投げるよりも高い位置から投げたほうが、ボールはよく落ちるからです。

WBCでもカーブを有効的に投げていた山本投手 写真:CTK Photo/アフロ
だから昔はカーブピッチャーが多かったんです。当時は、キャッチャースボックスで構えていると、セカンドベースは見えませんでしたが、今は明らかに見えます。何センチくらい違うのか、正確にはわかりませんが、僕の感覚でいうと20センチは違います。
山本由伸の唯一無二のボール
上田 マウンドが高いとカーブが有効なんですか。
古田 はっきり有効です。低い位置からカーブを投げる場合は、ボールを 1回上げなくてはいけません。つまり、いったん上げて曲げないといけないので、 同じ曲がり幅でも全然曲がりません。普通に投げるとワンバウンドしてしまいます。
昔のピッチャーは、ボールを真横に投げるだけで勝手に落ちてくれるので、よく曲がりました。たとえば、ゴルフのドライバーを打つときも、真っすぐから曲げるのは簡単ですが、右に出してから戻してくるのは難しいはずです。
上田 マウンドが低くなったというのが、カーブを投げるピッチャーが減った一番大きな理由なんですね。
古田 そうですね。今、昔のピッチャーのようにスピードがあってよく曲がるカーブを投げているのは山本君くらいではないでしょうか。
上田 へー、すごいなー。山本投手はドン・キホーテ並みに何でもありますね。
撮影/笹井タカマサ
『Q上田A古田 プロ野球で活躍する逸材とは?』(ポプラ社)
古田 敦也, 上田 晋也

2023年3月8日
1012円(税込)
282ページ
978-4591177402
野球界のレジェンド古田敦也に、大の野球好き、くりぃむしちゅー上田晋也が監督から選手、プロ野球の未来まで、他では聞けない秘話を語りつくす!
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