「天狗だった当時は人を見下していた」「女性は性の道具だった」いしだ壱成が語る“90年代フェミ男ブーム”の栄光と転落
90年代の「フェミ男ブーム」で一躍、国民的人気者となったいしだ壱成(48)。だが、ほどなくして稼いだギャラが父・石田純一に使い込まれていたことが発覚する。さらに2001年8月に大麻取締法違反(所持)の現行犯で逮捕され、その後、どん底を味わうことになる。
いしだ壱成インタビュー ♯2
あんちゃんは助監督と殴り合いのケンカして…熱かった!!
父・石田純一(68)の元でめきめきと俳優としての頭角を現していったいしだ壱成(48)。1992年に『悲しいほどお天気』(フジテレビ系)でドラマデビューした後、野島伸司脚本のドラマ『ひとつ屋根の下』(93年・フジテレビ系)や初主演作となる『未成年』(95年・TBS系)などの大ヒット作品に次々と出演。瞬く間に若手俳優のトップとなった。
いしだは当時の様子をこう振り返る。
「いいとか悪いとかではなく今のドラマ撮影現場と比べると当時は『熱度』が違った。『ひとつ屋根の下』で四兄弟の長男“あんちゃん”を演じた江口洋介さんなんて一番熱い方で、助監督と『なんだよ、おい、やってやるよ!』と殴り合いのけんかをはじめて。
“ちいにいちゃん”の福山雅治さんと『大丈夫かな……アレ』とか言って心配していました。とにかく、どの現場も熱かった」

インタビューに応じるいしだ壱成
当時は見返すことができなかった『未成年』は「自分の青春だった」
そして、自身の名を世間に轟かせた出世作である『未成年』については、意外なことを明かすのだ。
「今だからこそお話できるのですが、実は当時、自分の演技が恥ずかしくて見返すことができなかったんですよ……。
だけど、今回、(3度目の結婚相手である)元妻と離婚するにあたって、彼女が『いい作品だから』というので、DVDを借りて初めて『未成年』を見て、ガン泣きしましたね……。
“奇跡”のような作品でしたね。90年代の若者って、『俺なんて』って無気力でふてくされているということが社会問題になっていましたけど、そんな社会に対する野島伸司監督のアンチテーゼだったと思います。
とにかくあの頃の現場はみんなで怒鳴りあって掴み合うほど熱かった。自分や『デク』役の香取慎吾さんをはじめとした共演者の演技、脚本、照明、スタッフさんも含めて、すべてが“奇跡”だった。

未成年・サウンドトラックより
思い返してみて、一番印象に残っているのは、ゴロ(反町隆史)と自分演じるヒロがえい!えい!とやりあっているところ。実はあれ、全部アドリブなんです。台本になくてもその場で演技ができるくらい、皆が仲良くなっていて。
現場が僕にとっては“青春”だったし、主演の5人含めてみんなの青春だったと思うんですよ。多分誰に聞いてもそう言うと思うんです。なによりTBSのスタッフもすごかった。
今は香取さんや反町さんはもちろん、“優等生”神谷勤役の河合我聞さんも名バイプレーヤーとして活躍していますし、インポ役の北原雅紀さんは俳優としてだけではなく後進の育成にも力を注いでいる……30年近くたって、思い立って見返してみて『ああ、よかったな』って」
人生第2のターニングポイントとなった「フェミ男ブーム」の光と闇
90年代前半に巻き起こった「フェミ男」ブームを覚えているだろうか。いしだを筆頭に、現在「筋肉美」で再ブレイクを果たした武田真治(50)ら中性的な男性が、キャスケットに細身のブラウスなどフェミニンなファッションに身を包んだことから始まったブームである。
いしだはドラマのヒットだけではなく『フェミ男』ブームのアイコンとしてカリスマ的人気を博した。当時の話になると、いしだはふとシリアスな表情になり、こう述懐する。
「正直、怖かったですね……。自分がプライベートで買い物に行くと、その様子が写真誌に撮られ、そこで買ったものが翌日には売り切れになる。
例えばABCマートでスニーカーを買って帰って、1週間後そこに行ってみたら、『いしだ壱成が買った靴これ!』みたいなポップがついてて、ベストセラーみたいな感じになっちゃってる。今考えるとすごいいいことじゃんとも思うんですけど、当時は怖かったですね。イメージが一人歩きして、自分が何だかわからなくなっちゃって。元々、ただの島の少年ですから、完全にキャパオーバーとなった」

気がつけば国民的人気者となっていた、いしだ。その環境の変化は、まだ若かった当時の彼に大きな影響を及ぼした。
「天狗になっていましたね。わかりやすくいうと、完全に人を見下していました。
『どうせ金なんだろ』って。人ってやっぱり『お金』で動くんだって。
例えば、女性は完全に“性の道具”になっちゃってましたし、テレビ局で自分の楽屋に行くと“関係者”を名乗る人がズラーっと並んでたりするんですよ。自分はそれだけ影響力がある人間だと思ってしまい、人に何かを与えるというよりも『これは見返りがあるかな?』とかって考えてましたね。
今、思えば最低なんですけど、求めてばっかりいたなっていう。もう、何がよくて、何が悪いのか、全てわかんなくなっちゃって」

さらには、自分の稼いだギャラが父・石田純一に使い込まれていたことが発覚する。
「なんかおかしいな、こんなに仕事しているのに、なんでギャラがこんなに少ないんだろう?って不思議に思って、スタッフに聞いたところ、『実は……』って。それで、また『親子関係っていうのもやっぱり金なのか』ってなってしまった」
大麻取締法違反で逮捕。「干された状態に…」
そして、2001年8月いしだは大麻取締法違反(所持)の現行犯で逮捕される。
いしだは真剣な面持ちで「これが二度目のターニングポイントです」と語る。逮捕により、あれだけ売れっ子だったいしだへの仕事のオファーはピタリとやみ、いわば、「干された」状態となった。しかし彼を苛んだのはそれだけではなかった。
「逮捕されたとたん、それまでそばにいた人たちが、手のひらを返して蜘蛛の子を散らすように僕のそばから去っていったのです。それだけの大変なことをしてしまったので当然ではありますが、それにしてもここまで人っていなくなるのかと。
それまで毎日『今日何してんの』とか『遊び行こうよ』って連絡してきてた人間が、コロッと変わって『これからどうすんの』とか聞いてくるのですが、その声色がなにかちょっと嬉しそうなんです。昨日まで弟分みたいだった人が、突然『ざまあみろ』みたいなテンションで連絡してきたりとか。人ってここまで豹変するんだなって……」

インタビューに応じるいしだ壱成
反面、それでも変わらなかった芸能界の友人たちもいる。92年のいしだのデビュー作『悲しいほどお天気』でヒロインを演じた観月ありさ(46)や『聖者の行進』(98年・フジテレビ系)で共演した俳優の安藤政信(47)らだ。
「特に安藤くんは僕が天狗だったときも、堕ちたときも、変わらず親身になってくれて。『周りは変わってもオレだけは変わんねぇよ! サウナ行こうぜ』って親身になってくれた。我聞もそうでした」
当時、失意の底にいた彼を励ましたのは芸能界の仲間たちだけではない。「家族」である父・純一もまた、罪を犯した息子に寄り添ったという。3度の結婚と離婚を乗り越え、また、「純一ファミリー」の一員としても語られるいしだは、いま、「家族」についてどう考えるのか。
(♯3へ続く)
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
撮影/撮影/Soichiro Koriyama
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