〈埼玉・郵便局拳銃立てこもり〉逮捕された86歳男は刺青と傷跡を見せ、「これ刺されたんだよね〜」と不良アピール。15年前に同居女性がいなくなり粗暴に…アパート火災は計画的犯行か!?
埼玉県蕨市の郵便局に31日午後、男が拳銃を持って立てこもった事件で、埼玉県警は同日午後10時20分ごろ戸田市在住の職業不詳、鈴木常雄容疑者(86)を人質強要処罰法違反容疑で緊急逮捕した。局内にいた女性職員2人は突入前にいずれも解放されたり、逃げ出すなどして保護され、けがはなかった。
鈴木容疑者は同日午後、自宅アパートに放火し、戸田中央総合病院で拳銃を発砲したことも認めており「診察に不満があった」などと動機を説明。郵便局に籠城した理由については「郵便局の配達バイクとの交通事故を巡ってトラブルがあり、郵便局に恨みがあった」などと話しているという。県警は関連する事件の捜査を進め、拳銃の入手経路を追及している。
鈴木容疑者は自宅周辺ではふだんから刺青をチラつかせ、大声を上げるなど粗暴な老人として知られていた。同じアパートの住人女性(50代)は「あの人ならいつかやりかねないと思っていました…」と呆れ顔で語った。

逮捕された鈴木容疑者(写真/共同通信社)
「鈴木さんがここに引っ越して来たのは20年ほど前で、当初は10歳くらい年下のおとなしそうな女性と住んでいたので、たぶん彼女さんだったと思います。鈴木さん本人は、とにかく感情の起伏が激しい人で、平日の昼間に見かけることも多く、仕事はせずに生活保護でも受けてたんじゃないですか。アパートの敷地で会えば『今日すごい暑いですよね』とか『お母さんは元気〜?』と気さくに話しかけてくれるんですけど、同居していた女性と派手なケンカをすることもしょっちゅうで、激昂してブラウン管のテレビをドカーンと叩き壊して窓からぶん投げるのも見たことがあります」

鈴木容疑者が住んでいたアパート(集英社オンライン)
そんな気性の荒さに嫌気がさして出ていったのか、同居女性は15年ほど前から姿を見かけなくなった。そして、ふだんは気さくな鈴木容疑者だったが、カタギではない雰囲気を醸し出すことがあったという。
「その後も、会えば軽く世間話をしていたのですが、『おそらく“ふつうの人”じゃないな』という雰囲気はありましたね。鈴木さんはアパートにいるときはタンクトップ姿で過ごしていることが多かったのですが、左肩あたりに和彫の刺青が入っていたんです。オシャレな感じではなく、いわゆる任侠映画に出てくるヤクザがしているような凄みのある柄でした。あるときは突然、シャツをまくって『これ刺されたんだよね〜』とお腹の傷痕を見せられたこともあります。刺された理由は怖くて聞けませんでしたが、自慢気に話していたので、不良アピールしたいのかなとは思いましたね」
そして10年ほど前、この“不良自慢”老人から一方的に「絶縁」を宣言されたという。
「バカ野郎! ぶっ殺すぞ!」といった叫び声が…
「日頃からドアやふすまをバーンと閉めたり、真っ昼間から『バカ野郎!ぶっ殺すぞ!』といった叫び声がよく聞こえてきてました。そして10年ぐらい前のある日、いきなり『お前ん家とはもうかかわらねえからな!』と怒鳴りこまれたんです。それからは怖いのでまったくかかわらなくなったんですけど、鈴木さん、ウチの部屋の前にも、使わなくなったガスボンベやボロボロの靴などゴミ当然のモノを放置したりするので、迷惑もいいところでした」
そんな傍若無人な老人にも、数少ない友人はいたようだ。
「飲み友達のような男性と、アパートの前で楽しそうに話している光景は何度も見かけました。2週間前もドアの前で話しこんでいて、大声で『今度飲みにいこーぜ』とうれしそうにしていたのを覚えています」

鈴木容疑者が住んでいたアパート(撮影/集英社オンライン)
事件当日もこの女性は鈴木容疑者を目撃していたという。
「お昼前ぐらいに、いつもの黒色の原付バイクに乗ってどこかに行ってしまったんですけど、その後しばらくして『ドーン』という爆発音がアパート内に響きわたりました。最初は『大きな地震でも起きたのかな?』と思ったんですけど、鈴木さんの部屋の窓から黒い煙がモクモクと上がっていたので、『これは火事だ!』と一目散に逃げました」
鈴木容疑者は数日前から、少しずつ自室から荷物を運び出していたという。女性が続ける。
「もともとこのアパートは来年2月に取り壊されることが決まっていて、それまでに全員が立ち退くことになっていたので、その準備かと思っていたんですが、今思えば、放火するために自分の荷物を運び出していたのかもしれません。そのあとに病院で発砲事件を起こしたみたいですが、さすがに鈴木さんが拳銃を持っているのを見たことはありません。でも、鈴木さんは持病があって、病院に通っているということも聞いたことがあったので、あそこがかかりつけだったのかもしれません」

発砲事件があった病院(撮影/集英社オンライン)
「ワー!」とか「ウオー!」という怒鳴り声が響いていました
こんな身勝手な暴走老人に籠城された郵便局一帯は、一時は恐怖のどん底に突き落とされた。間近の一軒家に住む60代の女性が振り返る。
「昨日は午後1時すぎくらいから、防災無線で『発砲があったので外出しないでください』という呼びかけが4回ほどあり、自宅にこもっていました。午後2時半ごろにパトカーのサイレン音が聞こえたので、2階の窓からのぞいたところ、10台ほどのパトカーが家の前に止まり、警察官やシールドを持った機動隊員が大勢出てきました。すると、いきなり『パーン』という破裂音が響き渡ったんです。郵便局の近くには野次馬のような人たちがたくさん集まっていて、警察官があわててその人たちに『逃げて!逃げて!』と指示していました。まさかピストルの音だとは夢にも思っていなかったのですが、テレビをつけたらすぐ近くの郵便局が映っていて『逃走してる男の立てこもり現場で発砲』と流れていたので、それでようやくあれは発砲音だったのかとわかりました」

突入前、入念に打ち合わせする捜査員たち(地域住民提供)
この女性は発砲音の後、鈴木容疑者がわめき散らす声も聞いていた。
「何をいっているのかはわかりませんでしたが、『ワー!』とか『ウオー!』という怒鳴り声が響いていました。夜の7時ごろに再びガラス越しに外を見ると、郵便局の前で盾をもった機動隊員が5人ほどで列になって、パトカーの陰に隠れていて緊迫した状況でした。でも、刑事ドラマのように拡声器をつかって説得するような感じではなく、いたって静かでしたね。人質になっていた20代の女性が解放される場面も見ていましたが、郵便局の出入り口から肩を縮こませるように歩いて出てきて、かなり緊張した面持ちで機動隊の方たちに保護されていました」
女性は午後10時すぎ、テレビニュースで籠城男の身柄確保を知ったという。
「本当に昨日は怖かったし、近所の人たちが犠牲にならなかったのだけが不幸中の幸いでした」
郵便局員にけがはなかったが、病院の発砲では2人がけがを負った。情状酌量の余地も感じられない、後期高齢者の粗暴極まりない犯罪は、地域社会に迷惑だけ撒き散らして、あっという間に捕縛となった。

蕨郵便局
※「集英社オンライン」では、今回の事件について、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
蕨警察署(撮影/集英社オンライン)
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