<ヤマト・3万人個人事業主切りで新事実>メール便仕分け担当の契約社員数千人もリストラ対象。「説明会は15分で終了」「ヤマトは人を大切にする会社じゃなかったのか」
今年6月に締結した日本郵便との協業発表にともない、ヤマト運輸は9月23日、カタログやチラシなどの小型荷物の配達を委託するおよそ3万人の個人事業主との契約を、2024年度末までにすべて終了することを明らかにした。9月25日、集英社オンラインがこの問題について詳報したところ、現役のヤマト従業員から多くの声が寄せられ、小型荷物にたずさわる個人事業主だけでなく、契約社員までもが“リストラ”の対象になっていることがわかった。ヤマトの現場で働く人々の悲痛な声をお届けする。
DM便仕分け業務の契約社員もリストラ対象
ヤマト運輸と日本郵便が今年6月に結んだ基本合意書によると、ポスト投函サービスの「クロネコDM便」を来年1月末に、「ネコポス」は来年度末までに終了し、代わりに「クロネコゆうメール(仮称)」としてヤマト運輸ではなく、日本郵便の配達網で届けることになる。
これによって行われたのが、従来小型荷物の配送を依頼してきた約3万人の個人事業主への事実上のリストラ通告だ。同社は、あくまでもトラック運転手不足が懸念される”2024年問題”を見据え、「持続可能な物流サービス」を推進するために日本郵便との協業を決めたとしている。
しかし、関東地方在住の現役ヤマト社員は「うちの営業所のメイトさん(小型荷物の配達を委託される個人事業主)は自前の自転車(バイク)や営業所の台車を使ってポスティングしてるから、2024年問題は関係ないと思います。ただのコストカットでしょう」と話す。
メイト歴10年の配達員も「ヤマトにしてみれば、話題のドライバー不足や働き方改革といった都合のいいフレーズを便利に使っただけで、不採算部門を切り離したいだけ」と声を上げる。

小型荷物用の配達自転車(撮影/集英社オンライン)
集英社オンラインは、#1にて、今回のリストラ通告に対する個人事業主の声を紹介したところ、新たにヤマト運輸の正社員から情報提供があり、メール便の仕分け業務を担当する契約社員(パート)もその契約を打ち切られることが明らかになった。
取材に応じたのは、都内在住の現役のヤマト運輸正社員の男性。この男性は各センター(営業所)への投函物を統括する「ベース店」に勤めているというが、「あまりにも契約社員の方たちに申し訳ないし、会社の決定には到底納得いかない」と、今回のリストラ通告に怒りをにじませる。
「メディアの報道では、小型荷物の配達を委託しているメイトさんへの契約を終了するとのことでしたが、実際はDM便にたずさわる契約社員もリストラの対象になっています。
私が勤めているベース店でも、今年6月の日本郵便との協業発表のあとにDM便の仕分け業務を担当する契約社員への説明会が開かれ、ベース長に『郵政(日本郵便)と協業するからDM便の仕分けはなくなります』と言われたそうです。そして、その2ヶ月後に『来年の1月31日をもって契約を終わらせたい』といった趣旨の話をされたといいます」
ベテランの無期契約社員も契約打ち切り
この男性によると、ヤマトに小型荷物の配達を委託されている個人事業主およそ3万人のほか、全国の70ヶ所のベース店で働くDM便を仕分けする契約社員も来年1月末で契約を打ち切られるそうで、その人数は5000~6000人はいるのではないかと話す。
「6月のプレスリリース(協業発表)のあとに行なわれた説明会では、あまりに突然の出来事だったのか、契約社員の方たちもまさに寝耳に水といった感じで、質問もないまま口をポカーンと開けて、15分ほどで終わってしまいました」(同)
8月になって、基本給の3ヶ月分に当たる慰労金が支払われることや、残った有給を買い取ること、そして10月以降に転職支援サイトを開設することなどが明記された資料が配布されたという。しかし、前出の社員は納得がいかないと話す。
「ベース店でのDM便の仕分け業務は3交代制で、時給でいうと1300円と高いこともあり、これ一本で長年働いている人も少なくありません。なかには中学生の子どもを持つシングルマザーの方や、50~60代の方もいて『転職支援サイトを使ったところで、本当に希望する仕事に就けるのか?』と来年以降の仕事に不安を感じています。

協業発表直後の6月の説明会で配布された事実上のリストラ通知書
DM便以外の『宅急便』や『クール便』の仕分けの部署に配置転換をお願いした人もいましたが、却下されたそうです。説明会後に同僚社員も『なにもしてあげられない……』と裏で泣いていました。ヤマトは人を大切にする会社じゃなかったのか。残念でなりません」
さらに、ヤマト運輸には5年ほど契約社員として働くと、契約制限の定めがない「無期雇用」と呼ばれる契約を結ぶことができる。実際、DM便の仕分けスタッフのなかには、ヤマトで20年以上はたらくベテランの無期雇用契約社員がいた。しかし、そういった人材にも容赦なく、今回の“クビ切り”が襲い掛かった。
「その後の説明会では、『無期雇用契約なのに、1月末までの契約変更に同意しろなんておかしいじゃないか』といった怒りの声が続出しました。しかし、ベース長やマネージャーにも細かい指示が飛んできてないようで、『これ以上は自分たちにもわかりません』という感じで……。契約社員の方たちが本社にメールで抗議もしたところ『ご協力ください』『ご理解ください』としか返ってこなかったそうです」(同)
再びヤマト本社に回答を求めると…
実際にヤマト運輸に15年勤務しているという無期雇用契約社員もこう嘆く。
「私はMD(メール便ドライバー)で、今年の春先に無期雇用契約をした矢先に今回のニュースを見て驚きと大変なショックを受けました。再就職支援もあるようですが、自分は50代なので正直再就職は厳しく、今は不安しかありません。同僚たちも使い捨てにされているイメージが強くなってきています。パート(契約社員)だからなのか、慰労金も世間一般の金額よりもはるかに少ないですし。ヤマト運輸は人を大切にする社訓がありますが、まったくの正反対です。自分たちはひとつの小さな駒にすぎません」
また、取材を進めるうちに、関西エリアで長年パート社員として働いている女性からはこんな声が聞こえてきた。
「私もセンターで無期雇用の契約社員として働いていますが、9月の頭に支店長に呼ばれて『来年1月31日以降は契約できない』と言われました。でも、私はおもに『FC(フィールドキャスト)』というドライバーの補助スタッフのような役割で、DM便業務とはまったく関係ないんです。だから会社の決定にどうしても納得いきません」
この女性だけでなく、来年1月以降はすべてのFCとの契約を打ち切るとのことで、支店長に理由を聞いても「会社都合」としか答えてもらえなかったという。

8月の説明会で配られた支援内容についての資料
「同じセンターで働くドライバーたちも『なんでFCがクビになるん!?』と驚いていました。今後は社員にしわ寄せがいくでしょうが、それよりも深刻なのが、地域のご家庭とのコミュニケーションです。
FCは車で入れないような細い道にあるご家庭に、台車に荷物を積んで配ったりするのですが、訪問するご家庭のなかには、ご高齢の方や体の不自由な方もいます。
そういった方たちと軽くお話ししたり、サービスの一環として自宅の中まで荷物を運んであげることも多かった。これをドライバーひとりでやるのは難しいだろうし、そうなると、ヤマトの真髄でもあったサービスの質はどんどん落ちていくでしょうね」(同)
今回の話を受けて再びヤマト本社に問い合わせをすると、以下のような回答が寄せられた。
「いずれのご質問も、個別の契約に関わる事項であり、また現在、対象者となるクロネコ DM便・ネコポスに関連する業務に関わる方、お一人おひとりに説明を行っているところであるため、当社からの回答は差し控えさせていただきますが、これまで業務を支えていただいてきたすべての方に心から感謝を申し上げます」
ヤマト運輸の社訓は「ヤマトは我なり」。“人”を会社の一番大切な財産と位置づけている同社だが、この回答に誠意が込められていると感じる個人事業主や契約社員がどれほどいるのだろうか。
※「集英社オンライン」では、宅配業者のトラブルについて、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。
メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com
X(Twitter)
@shuon_news
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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