現場はJR岐阜駅から北東約5キロの屋内射撃訓練場で、近くには住宅街もあるが、民間人に被害はなかった。
この事件を受けて陸自トップの森下泰臣陸上幕僚長は同日、記者会見を開いて「国民の皆さまに大変ご迷惑、ご心配をおかけして申し訳ありません」と陳謝。「このような事案は武器を扱う組織として、決してあってはならない。非常に重く受け止める」と、調査委員会を設置して原因究明と再発防止を図ると述べた。また、今回の事件を受け、全国の射撃・爆破訓練を中止して、部隊の安全管理を徹底するよう指示したことを明らかにした。
同射撃場は陸自中部方面第10師団(師団長、酒井秀典陸将)守山駐屯地(愛知県)が管理する訓練場。この日おこなわれていたのは、第35普通科連隊自衛官候補生課程の射撃訓練で、指導教官ら約50人を含めた約120人が参加していた。被害にあったのは死亡した25歳の男性隊員と52歳の男性隊員、負傷した20代の隊員の3名で、いずれも候補生の指導担当だったとみられる。
〈自衛官候補生が銃乱射3人死傷〉逮捕された男(18)は“素行不良”との風評か…“岐阜のビバリーヒルズ”で起きた惨劇、被害者はいずれも指導担当で泣き崩れる自衛官も…39年前に類似事件も
6月14日午前9時10分ごろ、岐阜市の陸上自衛隊日野基本射撃場で、射撃訓練中の自衛官候補生の男(18)が自動小銃を乱射。隊員3人が撃たれ、うち2人が死亡、1人が負傷した。他の隊員が男の身柄を確保し、110番で駆けつけた岐阜県警が殺人未遂容疑の現行犯で逮捕した。
被害者はいずれも候補生の指導担当

新隊員教習隊の教習射撃(陸上自衛隊第35普通科連隊のホームページより)
https://www.mod.go.jp/gsdf/mae/10d/butai/butai/35i/custom2.html
同射撃場の近くに住む男性は、興奮を隠せない様子でこう語った。
「私は毎朝6時から犬の散歩をして、日野射撃場の前を通るのが日課で、今朝もいつも通り自衛隊の方たちがトラックで連なって射撃場に入っていきました。10年ほど前はまだ、今みたいな立派な建物がなかったので、鉄砲の音や隊員さんのかけ声も聞こえてきたのですが、建物ができてからは中の様子も音も聞こえなくなりましたね。隊員さんを見かけるのも朝夕のトラックの出入りのときぐらいになりました。
今朝は散歩から帰宅すると、しばらくしてヘリコプターの音がすごかったので山火事か、長良川で何か事故でもあったのかと思っていました。日野射撃場で何かあったとはまったく想定もしていなかったので、事件のことを知って驚きました」

事件現場となった陸上自衛隊日野基本射撃場(写真/共同通信社)
「私がこの団地に引っ越してきたのはもう20年以上前の事です。静かな場所だって言われて、こっちに引っ越してきたのですが、今の射撃場の建物ができる前は、土手に向かって鉄砲を打ち込んでいました。音がうるさいのはもちろんなのですが、土手に打ち込まれた鉛が水に溶けるだとかで、この辺りから基準値の何倍にもあたる鉛の値が出たということで地域の住民が署名活動していたときもありました。そういう経緯があって建物も建てられ、施設内の見学ツアーも行われた。このところは音も聞こえなくなってよかったのですが、まさかこんなことになるなんて……」
最近では地域住民との交流も改善したなかで起きてしまった射撃場内での事件に住民は怯えていた。
泣き崩れたり、励ましあう若い自衛官も
社会部記者が語る。
「このあたりはかねて岐阜のお金持ちが住むエリアで、複数の医者や地元銀行の頭取、大学の学長なども住んでおり、一部では『岐阜のビバリーヒルズ』とも呼ばれている。
逮捕された自衛官候補生は『もともと素行が悪い』という風評で、県警の調べに容疑を認め『殺意があった』『最初に横にいた隊員を撃ち、次に教官を撃った』といった趣旨の供述をしている。事件後、現場付近は慌ただしく自衛隊関係者が出入りしており、なかには泣き崩れたり、励ましあう若い自衛官もいた」

日野基本射撃場、たたずむ自衛官と肩に手を置く自衛官(写真/共同通信社)
陸上自衛隊では39年前にも現役隊員による小銃乱射事件があった。
1984年2月27日、山口市の山口駐屯地射撃場で訓練中の2等陸士(当時21歳)が突然同僚隊員に向け自動小銃を乱射、コーチ役を務めていた1士ら4人を死傷させた。2等陸士は銃を持ったままジープで逃走、約5時間後に市内の中学校近く付近の藪に潜んでいるところを山口県警が発見し、銃刀法違反の現行犯で逮捕するという顛末だった。

防衛相
今回の岐阜市の事件を受け、同日、浜田防衛大臣は「国民の皆様に大変ご心配をかけたことを心からお詫びを申し上げたいと思います。大変申し訳ございませんでした」と謝罪した。
※「集英社オンライン」では、今回の事件について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班