気温、気圧、湿度など、周囲の環境の変化に合わせて、体に負担がかからないよう調節をするために、自律神経ははたらきます。
自律神経は名前の通り、「自律=自然に・勝手に・自分では動かせない」神経で、生きていく上で、とても大切なはたらき(心臓を動かす、呼吸をする、血管を広げたり縮めたりする、ホルモンを分泌するなど)を担っていて、体の表面から内臓、血管に至るまでほぼ体全体に分布しています。
自律神経は、一般的に「交感神経=アクセル」と「副交感神経=ブレーキ」に分かれます。
基本的には、体内時計や、1日の生活パターンや季節の変化に沿ってはたらくので、起床して、日中から夕方にかけては、体を動かすために、交感神経が優位にはたらき、また夕方以降、夜から朝にかけては、リラックスする時間帯となり、副交感神経が優位にとなります。
ただし、自律神経のバランスは乱れやすく、交感神経=アクセルが強くなっている場合は、血管が縮みやすく、血流が悪くなるため、めまいや頭痛を起こしやすくなるのです。
近年、注目されている気象病は、自律神経の乱れに伴う症状と言えるでしょう。
とくに、最近は気温差が激しいことや昔に比べて一定の温度に保たれた室内で過ごすことが多く、外出した時の温度や気圧の変化に体が対応できなくなっているのも、めまいや頭痛などが多くなっている原因と考えられています。
気圧の変化でなんとなく不調、ぐっすり眠れない…は耳を温めれば改善する!
寒暖差が大きい日が続くと、頭痛やめまいなど体調を崩しがちに。こうした不調の原因の一つに自律神経の乱れが上げられるが、そんな時、耳を温めると整うと言われている。耳を温める効果について、きたにし耳鼻咽喉科院長の北西剛先生に解説いただいた。
気象病は自律神経の乱れに伴う症状

気圧の変化は交感神経が優位にはたらく
耳を温めると自律神経が整う理由
気温差が大きい今の時期に自律神経を整えるのに、簡単で行いやすくおすすめなのが、耳を温めることです。
動脈と静脈をつなぐ血管(=AVAまたは動静脈吻合)は、手足末端や耳などに多く存在し、この血管を温めて熱を放散させることで、深部体温を下げることができます。
耳を温めることで深部体温を下げ、さらには、皮膚温度を上げて深部体温との差を小さくすることは、リラックスや快眠につながります。
また、耳介(じかい=外側に張り出している部分)には、自律神経、とくにリラックスに関係する副交感神経が豊富にあります。東洋医学でよく使われるツボも、耳介に集中しています。
子どもがいる人なら赤ちゃんが寝る時に耳を触ってあげると、途端に眠ってしまうという経験をされたこともあるかもしれません。
とくに親しい人との触れ合いでは、愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシンが分泌され、安心感が生まれることでリラックス効果がもたらされます。
それほどに耳は、リラックス・安心感をもたらしてくれる部位なのです。
耳は常に露出している部分ですし、服を脱ぐ手間もないので、簡単に「手当て」ができるのが良い点です。
耳の温め方として単純な方法ですが、両手で耳を覆うことでも温かく感じると思います。
寒い時期はニット帽や耳当てなどで耳を冷やさないようにするといいでしょう。
リラックスしたいときは蒸しタオルで耳を5~6分程度覆うと気分が落ち着きます。
さらに耳をひっぱる、触るだけでもリラックスできると思うので、仕事や家事の合間にやってみてください。

ニット帽などで耳を温めると自律神経が整いやすい
その他、自律神経が乱れる原因となる生活習慣を見直しましょう。
・就寝・起床時間がバラバラ
・スマホ・パソコンを長時間使う、
・とくに夜、就寝前までスマホを見る
・湯船につからない入浴習慣
・朝日を見ない・浴びない
・朝食を食べない
・音の刺激が多い(スマホやゲームのやりすぎなど)
などは気象病の原因にもなるので、改善するように心掛けてください。
聴覚は眠っている間も休息しない
コロナ禍でリモートワークや自宅で過ごす時間が多くなった分、耳は疲れやすくなっていると考えられます。
長時間、音楽、映画やプログラム、ゲームなどを視聴できる環境ですし、リモートワークが進みイヤホンを使用する機会も時間も増えていますよね。
自然に流れている音を聞くのとは違って、会議や仕事でイヤホンを使ってしっかりと集中して聞こうとすることで、今まで以上に耳を使う時間が確実に長くなり、負担も大きくなっています。
また、耳だけでなく脳を疲労させることにもつながってしまうのでしょう。
耳が疲れてしまうことで、めまいなどの不調や症状が出てしまうのです。

長時間のオンライン会議で耳はお疲れモードに
さらに聴覚は、眠っている間も、危険性を察知する感覚として、嗅覚と同様、休息することはありません。こうした背景もあり、耳には疲労が蓄積しやすいと言えます。
会議の後、耳を引っ張るなどしてリラックスさせたり、スマホやパソコンを長時間使ったりするのを見直して、乱れた自律神経を整えるようにするのがおすすめです。
取材・文/百田なつき
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