
〈久本雅美×喰始〉「ただ裸を見せても、アイデアがないとつまんないじゃないですか」WAHAHA本舗の“下ネタ流儀”の極意
1984年に「WHAHA本舗」を創設し、苦楽をともにしてきた主宰・演出家の喰始さんと久本雅美さん。39年のつきあいで変化したものとは? 演出家、出演者の両面から見解を聞いた。
下ネタをどうおしゃれにするか
――WAHAHA本舗に対して、「下ネタや裸芸の多い過激なお笑い集団」といったイメージを持つ方もいると思いますが、実際はどうなんですか?
喰 下ネタは下ネタでも、どうおしゃれにするかを考え続けてきましたね。WAHAHAの初期に「うんこの妖精」というネタを作ったんです。作り物のうんこに羽を付けて、パタパタパタって飛ぶような仕掛けを考えて。
――シュールな感じもしますね。
喰 そうなんです。要は下ネタは下ネタでも、下品なだけじゃない下ネタをやっていました。
久本 やっぱりアイデアがないと。ただ裸を見せても、アイデアがないとつまんないじゃないですか。見せ方でおしゃれにするのが喰さんのコンセプト。
喰 昔、登場するキャラクター全員が昆虫という「マッチ売りの少女」の劇をやったんです。久本がマッチ売りの青虫役で「マッチはいかがですか?」って言うと、カマキリが来たり、フンコロガシが来たりするシュールで薄気味悪い世界観のネタでした。
「マッチ売りの〇〇」はシリーズ化したんですけど、何回目かで「マッチ売りのうんこ」をやりました。びちぐそ、宿便、バリウム、いろんなうんこがやって来るんです(笑)。
久本 いやいや、うんこ多い! うんこだけやってるわけじゃないですからね。
――(笑)。
久本 例えば、「2人で1人ダンス」というネタ。1人がダンスをしていると思って振り返ると、実は2人でダンスをしているというネタなんですけど、そういうおしゃれなものもやっていました。
DJ OZMA「裸スーツ」の真相
――昔、裸芸をやっていたら、警察官が取り締まりに来たこともあったそうですね。
久本 そんなこともありましたね(笑)。でも、われわれは裸になっても大事なところは「見せない美学」があるんですよ。見えそうで見えない、というやつ。
喰 当時は黒子が裸で客席に降りたりしていたんですが、大事なところは黒い布で隠しているわけです。でも、お客さんが横からのぞき込むと見えるじゃないですか。だから、見せたんじゃなくて、見えてしまったの。それでほかのお客さんが「見せていいの?」と通報して警察官が来たんです。
久本 14人くらい来て、客席の後ろで見ていました。最後のダンスのときに私と柴田(理恵)はステージで踊っていたんですけど、どうしても警察の反応が知りたかったから、「ちょっと行ってみない?」って柴田を誘って見に行ったんです。警察の方に「ご苦労様です」って言ったら、めっちゃ笑っていましたよ(笑)。
――おとがめはなかったんですか?
久本 なかったです。次の日も来たんですけど、普通に笑って帰っていきました。
――WAHAHA本舗といえば、肌色のタイツにリアルなイラストを描いた「裸スーツ」が有名です。DJ OZMAさんが『紅白歌合戦』(NHK)で使用したことでも話題になりましたよね。
喰 あれはDJ OZMAさんがWAHAHAの全体公演を見て、「カッコイイからやりたいです」って言ってくれて。自分で発注して裸タイツを作ったけど出来が悪かったから、「本物を貸してくれませんか?」と言われて貸してあげたんですよ。
久本 私はそれを知らなかったので、紅白を見てビックリして。DJ OZMA君がWAHAHAの公演を見に来ていたのを覚えていたから、すぐに喰さんに「パクられました!」って電話したら、「久本、落ち着いて、俺が貸したんだ」って(笑)。
コロナ禍で封印された、梅ちゃんの“豆飛ばし”
――近年はコンプライアンスも厳しくなってきているので、さすがに過激路線から変わってきましたか?
喰 コンプライアンスというより、俺が裸を売り物にすることに飽きてきたの(笑)。今までいろんな裸芸をやってきたから。
久本 たしかにいっぱいやってきたからね。年齢を重ねてくると、裸になっていい体と悪い体があるじゃない(笑)。演者側が頑張って張り切っても、お客さんに「そんなみすぼらしい体、見たないわ」「かわいそうやな。おじいちゃん」とか思われたら嫌やん。
喰 年寄りの裸はきつい。63歳の梅ちゃん(梅垣義明)の裸はもうきついんですよ(笑)。
久本 そう。若い子にやってもらわないと。
――出演者が歳を重ねるにつれて、公演の内容も変わってきたんですね。
喰 次の公演は新しいアイデアがあるから裸芸をやるつもりですけどね(笑)。
――またやるんですね(笑)。一昨年には全体公演『王と花魁』が上演されました。コロナ禍ですが、飛沫対策など、演目に影響が出ませんでしたか?
喰 ありました。まずお客さんとのふれあいができなくなりましたから。客席に向かって鼻から豆を飛ばす、梅ちゃんの“豆飛ばし”はやれませんでした。
久本 梅垣は手も足も出なかったので、クソつまんなかったです(笑)。でも、スモークの中から出てきて咳込みながら歌ったり、頑張っていましたけどね。お客さんとのやりとりができなくなって、梅垣は残念に思っているんじゃないですかね。
――コロナで梅垣さんの魅力が半減してしまったんですね。
久本 いや、半減以下だったと思います(笑)。
梅垣という屋号を継ぐ!? “2代目・梅ちゃん”が誕生!
――今年6月の全体公演のタイトルは『シン・ワハハ』です。新たなWAHAHAを見ることができますか?
喰 “シン・梅ちゃん”が見られますよ。梅ちゃんが引退します。
――え! 梅垣さんが引退⁉
喰 ほかのメンバーが「“2代目・梅ちゃん”は自分だ!」と名乗りを挙げ、自分なりのネタを披露して、お客さんの投票によって2代目が誕生します。
――いやいや、梅垣さんは本当に引退するんですか?
久本 梅垣は“シン・梅ちゃん”として新たに出発して、優勝したメンバーは“2代目・梅ちゃん”になります。
――え? 梅垣さんが“シン・梅ちゃん”になるんですか? 新加勢大周のルールでいうと優勝したメンバーが“シン・梅ちゃん”ですが、本家の梅垣さんが“シン”を名乗るんですね。
喰 「梅垣という屋号を継ぐ」みたいなことですね。優勝したメンバーには引き継いでもらいます。
久本 ただ心配なのは、2代目をやりたいやつがいてるかどうかってこと(笑)。
取材・文/インタビューマン山下 撮影/山上徳幸
WAHAHA本舗PRESENTS
WAHAHA本舗全体公演「シン・ワハハ」
[公演日時]
2023年6月22日(木)~25(日)
6月22日(木) 18:00~
6月23日(金) 14:00~
6月24日(土) 13:00~ / 18:00~
6月25日(日) 14:00~
[会場]
なかのZERO 大ホール
[チケット]
2023年3月25日(土)午前10時より
一般発売開始 ・各プレイガイド
http://wahahahompo.co.jp/2022newwahaha/

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