虐待死する子供の約半数が0歳児

その20代の女性は、漫画喫茶で父親のわからない子供を出産した。直後、彼女はとっさにわが子の口をふさいで殺害した。後に、彼女はその瞬間を次のように振り返った。

「なんだか、腰に力を入れていたら出てきちゃって、それで泣いたからあわてて口をふさいだら、なんか、なんか、死んじゃいました……。困ったなって。でもバレたら困るからスーツケースに入れておきました」

一般的に虐待死事件と聞けば、鬼畜のような親が幼児に対して暴力をふるうようなイメージがあるだろう。

だが、実際の虐待死事件では、生まれたその日に殺害される嬰児の数が非常に多い。これまで私自身も、漫画喫茶だけでなく、自宅の寝室で、彼氏の家の浴室で、公衆トイレで、新幹線のトイレで、ラブホの浴室で望まぬ出産をし、わが子を殺めた母親たちに会い、話を聞いてきた。その数だけでゆうに10人を上回る。取材対象者だけで、そんな数に上るのかと驚くかもしれない。残念ながらそれが事実なのである。

虐待死事件において、「0歳0か月0日」というのは、重要なキーワードになっている。

近年、虐待死する子供の数は60~90人前後に上る。そのうちの半数くらいが0歳児であり、さらに0歳0か月0日は10人以上に上るのだ。もう少し具体的に言えば、2003年から2018年までの16年間で833人の子供が虐待死させられている。この中で0歳児は約半数の47.4%。そして0歳0か月0日の子供は18.7%を占めている。

ホストにハマり漫画喫茶の個室で出産、そして…0歳0か月0日の虐待死事件_1
厚生労働省社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会(2007年~2019年の累計)
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これまで私が取材してきた10件以上の嬰児殺し事件には、共通するパターンがある。実際に起きた事件を通して考えてみよう。