男性は男性ともセックスしてきた

「男性は女性とセックスをするのが当たり前だ」という考えは、僕たちの社会の大前提になっています。映画を見てもドラマを見ても、男性は女性とセックスしていますよね。

最近は性的少数者への権利の平等性が語られるようになり、同性愛の人々が少なからず存在することも知られてきました。ただ、あくまでも彼ら・彼女らは「少数者」ということになっています。ノーマルな男性は男性に欲情しない、という前提は変わりません。しかし、それは非常に特殊な考え方です。

人類史を見ると、男性同士でも結構、普通にセックスをしています。

中国もヨーロッパも日本も、どの文化も共通して男性間セックスが認められていました。あまりに普通だったので例を挙げるとキリがないくらいですが、プラトンも、ソクラテスも、アレクサンドロス大王も男性同士でのセックスをしていました。日本でも織田信長をはじめ、多くの歴史上の偉人が男性間セックスを経験していました。「いや、俺は男性とは絶対にセックスをしないんだ」という“少数者”もいたかもしれませんが。

それがなぜ、男性間のセックスばかりが特殊で、否定的なイメージを持たれるようになったのか。それは、ユダヤ教とキリスト教の影響です。

2000年ほど前に中東の元大工さんが始めたのがキリスト教です。キリスト本人が同性愛について言及したかはともかく、聖書の記述をもとに「同性愛は悪いことである」とする価値観が、信者の間で広がっていきました。

キリスト教はヨーロッパ中に広まりましたから、キリスト教の拡大と一緒に同性愛を否定する考え方も浸透していきました。

でも、キリスト教の世界の外では、男性間セックスは一般的でした。江戸時代には将軍や武士、庶民など、どの身分でも男性同士でセックスをしています。しかし明治時代になると、日本人は先進的な欧米の文化を取り入れる必要に迫られます。そうでなければ、日本も先進国になれませんから。