高校生のいる世帯の扶養控除が一律引き下げへ

もはや「異次元の少子化対策」ではなく「異次元の少子化促進対策」とも言わざるを得ない。政府は、所得税38万円、住民税33万円を課税の対象となる所得から控除できる扶養控除について、16歳~18歳を対象に引き下げる案を検討している。所得税や住民税では扶養する子どもや親などの人数に応じて扶養控除を適用できるが、高校生世代の子どもがいる納税者については控除額がカットされることになる。

所得控除は所得税や住民税の税率をかける前の所得を減らすことができるものなので、控除額が大きいほど税負担は軽くなる。つまり控除額の引き下げは実質的な増税となる。

「子育て罰」を可視化する扶養控除制度…親が稼ぐほど子どもが損をする日本の教育費の行く末_1
岸田文雄首相 写真/共同通信
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児童手当は高校生にも支給開始されるが……

扶養控除引き下げの理屈はこうだ。子ども向けに国から支給される児童手当は、現在は0歳から中学生までが対象だが、2024年12月以降は高校生世代である16~18歳にも拡大される予定になっている。実現すれば、高校生のいる世帯には子ども一人当たり月1万円が支給されるようになる。

また、現在支給されている中学生までの子どもも含め、親の所得制限が撤廃される見通しでもある。

現行の児童手当には所得制限があり、子ども2人と専業主婦(夫)がいる会社員世帯では目安年収960万円、子どもが3人なら目安年収1002万円を超えると受給額がカットされている。本来の支給額は3歳未満は月15,000円、以降中学生までは月10,000円(第3子以降は3歳~小学校卒業まで月15,000円)だが、これが月5000円になってしまう。同じ条件で年収1200万円を超えると、支給額はゼロになってしまう※。
(※年収は児童手当を受け取る人の年収額で判断。共働きの場合は夫婦で年収が高いほうの年収額を基準とする。)

児童手当だけ見れば、この見直しは子育て世帯にとっては恩恵になる。そこで検討されたのが、冒頭の所得税と住民税の扶養控除削減だ。従来からの扶養控除を継続すれば、高校生の子どもがいる世帯には児童手当の給付開始と合わせて“優遇の二重取り”になるからだ。

当初は高校生世代への扶養控除を廃止する案もあった。しかし廃止となると、年収によっては課税所得が増えて、所得税や住民税の増税分が児童手当の支給額を上回ってしまうケースが生じてしまう。そこで、扶養控除の廃止ではなく引き下げとすることで、これを避ける格好だ。