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僕らの文明は火から始まる

2020年9月19日。その日の日記には、「アツかった」と書いてある。シルバーウィークの4連休の初日。もう9月も中旬だというのに、山に来ていた僕たちは半袖で、脇には汗がにじんでいた。それは季節外れの“暑さ”のせいだけではなかった。僕らは木の棒を手のひらで挟み、一心不乱になって回転させまくっていたのだ。

その日、人生で初めて「キリモミ式火起こし」に挑戦していた。マッチやライターに頼らず、自然のものだけで自力で火を起こしたい。そんなわけのわからない、“熱い”思いに突き動かされていた。

「僕らは縄文人を完全にナメていた」都会のサラリーマン2人は“原始の火起こし”を再現できるのか?〜「週末を使ってゼロから文明を築く」前編_1
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遡ること1週間。僕らは【週末を使ってゼロから文明を築く】という挑戦をするにあたって、一番初めに何をすべきか話し合っていた。2人とも歴史学や考古学を学んだことのない素人だが、すぐに意見は一致した。

「やっぱり、文明は『火』から始まるよな!」

調べてみると、人類と火の歴史は想像以上に古かった。僕らの祖先が日常的に火を使い始めたことを示す最も古い証拠は、なんと75万年前のものらしい。原人が暮らした遺跡から、火打ち石や焼けたオリーブの種が発掘されたそうだ。焼きオリーブとかおしゃれすぎる。

ともかく、自然のものだけで起こした火で僕らの文明の灯がともるなんて、最高にかっこいい幕開けではないか。そんな青写真を思い描きながら、アツい回転運動が始まった。