ポジションが固定されないやりづらさ

勝てない時は、色々と動きたくなるものですが、一方で、ポジションや打順が固定されないのは、選手にとってやりづらさもあるものです。

例えばサードのスタメン。ここまでの26試合で糸原選手が10試合、大山選手が7試合、佐藤輝選手が8試合と試行錯誤が続いていますが、いくらプロとはいえ、これでは細かい連携に影響も出かねません。

僕の経験上、デーゲーム時などは、光の加減でセカンドの位置にいると、サードからの送球が見えづらいんです。この時、サードを守るのが糸原選手なのか、大山選手なのか、佐藤選手なのかで球質がシュート回転したり、スライダー気味だったりと変わってきます。そこに気を遣うだけでも、1年を通したらかなりの疲労が溜まることになります。

また、打順も何番を打つかによって考えることが変わってきますし、敏感な選手だと「打順が下がったということは、今日打てなかったら次は試合に出られないんじゃないか」とひどくプレッシャーを感じることもあります。

こうした目に見えない疲れが積み重なることで、“ここからが勝負”という夏場に成績を落とす選手が出てくる可能性があるのです。

さて、少しネガティブな話題が多くなりましたが、タイガースもまだまだ戦いはこれからです。青柳投手が戻ってきたり、ウィルカーソン投手が戦力になったりと明るい材料もありますし、マルテ選手が戻ってくるとさらに戦力は上がるでしょう。

今後、タイガースが浮上するためには、早く「自分たちの形」を確立することが大事になってくると思います。去年までのタイガースには「足を使ってどんどんかき回し、先に点を取って、ピッチャーで逃げ切る」という勝利の形がありましたが、今年は戦力も違いますから、まったく同じ野球はできないでしょう。だからこそ、「自分たちの形」を、また一から作り直さなければいけないと思います。

個人的には佐藤輝選手に注目していて、僕は彼がプロ野球界の一線で長く活躍するには、「4番・サード」が一番いいと思っています。

今季は打順が4番→2番→3番と変わっていますが、彼には打球を遠くに飛ばす天性の才能があるし、その将来性やポテンシャルを考えるとやはり4番が適役なのかなと。

守備も開幕時はライトで、最近ではサードを守ることが多いですが、毎試合毎回、外野からベンチに帰ってくるよりも、内野からのほうが近いので息が崩れません。このことは年間を通して考えると小さなことではないんです。また、早くベンチに戻れたほうが打席に向かうまでの時間が増えるので、頭の中を整理することもできます。

佐藤選手には「4番サード」として、今後の野球界を引っ張っていく存在になってほしいですね。


構成/能見美緒子 撮影/宮脇進