「人間は基本的に一人だっていう考えを、強く持っているんでね。昔から、他人と一緒にチームで同じ考えでやっていくというのが、すごく嫌いなんです。チーム全体としてではなく、まず一人一人が強くないとダメだと信じているんですよ。
昔、キャロルの人気がすごかった頃、原宿の連中がみんなキャロルの格好を真似していました。あるインタビューで、その状況をどう思うか聞かれた永ちゃんは『知らねえよ、そんなこと。そんなの責任取れねえだろう、俺が』って答えたんですが、すごく感動しました。本当にそうだよなって。俺の歌で人が何を考えようが、どう変わろうが、俺には関係ない。おまえの生活だろっていう思いを基本に、ずっとやってます」

そうすると、伝えたかった真のメッセージを曲げて捉えられ、批判・批評されることもあるのではないだろうか。世の表現者の中には、世間に誤解されると血相を変えて抗弁したり、真意を伝えようと発信を重ねたりする人もいるが、HIKAGEはそんなことすらもどうでもいいという。

「俺は平気だね。逆に『すげえな、そういう見方もあんの?』と、面白くなります。日本語はわずかに言葉の順序が違うだけで、まったく別の意味になったりもしますから。変なふうに捉えられても、それはそれで全然OK。昔からそういう人間なんで、パンクに向いていたのかもしれません(笑)」

「俺の知ったこっちゃないから責任は自分で取ってくれ」と語る、ザ・スタークラブHIKAGEとファンの関係_2
「 自分のパンクアイドル! パンク歌詞の天才!」。HIKAGEについて、ニューロティカのATSUSHIはこんなメッセージをくれた。(撮影/木村琢也)

僕は今回のインタビューでHIKAGEに、初めて聴いてから39年目にして直接、あの「THE LAST RIGHT(最終権利)」に込めた真意を聞こうかとも思っていたのだが、やはりやめておいた。
中3の秋、レコードプレーヤーの前で僕は、明らかに気持ちがゾクゾクしていた。まるで自殺を礼賛しているかのような、その歌が正しいか正しくないかなんて、もはやどうでも良かった。学校の先生や親やテレビに出ている大人たちが決して言わないような、こんなにヤバいことを堂々と歌える人が世の中にはいるということを知り、気持ちが妙にたかぶったのだと思う。そして詭弁、強弁、逆説、アイロニーなんでもありの、自由なパンクという音楽に、本気でのめり込んでいった。

バンドのボーカリストに「知るか。勝手に死ね」と言われて、本当に落ち込むようなヤワなやつは、HIKAGE流に言えばパンクには向いていないのかもしれない。たとえ本気で死にてえなと思っていても、ステージに向かって中指を突き立ててツバを飛ばし「うるせえ! こっちだって、てめえに言われたくねえな。勝手に生きてやるよ!」というのが、パンクバンドとファンの正しい関係のような気がする。