ノスタルジーで、おいしさ倍増する鮭おにぎり
さて、日本人の食欲をそそる鮭おにぎり、その人気の秘密はなんだろうか?
大塚にある創業60年の老舗おにぎり専門店「ぼんご」の店主・右近由美子さんにお話を聞いてみた。
「魚が嫌いな人、外国の方も『おいしい』とおっしゃいますから、ごはんとの相性がいい定番中の定番なんだと思います。一個目は目新しいお肉系の具を食べても、締めには昔から変わらない鮭のおにぎりを頼まれる方も多いですね。
さらに思うのは、子供の頃、お母さんが握ってくれたおにぎり、運動会で食べたおにぎり、そういった記憶が呼び起され、思い出の中でも鮭のおにぎりを味わっているんじゃないでしょうか」と教えてくれた。
とはいえ、右近さんのお店では、昔と変わらぬ作り方で鮭のおにぎりを出しているわけではない。お客さんのいちばん人気の商品だからこそ、常に進化させているという。
「カウンターで、おにぎりを提供しているので、常にお客さんの反応が伝わってきます。鮭のおにぎりが『前よりもおいしくなった』と言っていただけると本当にうれしいです。
鮭選びにはこだわり、切り身の上にハラスをのせて、ほどよい脂が混ざるようにオーブンで焼いています」とおいしさの秘訣を教えてくれた。
各店、いちばん人気だからこそ、手を抜かずに進化させ続け、それゆえ鮭はおにぎりの具の不動の1位を譲らないのだろう。
保存食・携行食として、古くから日本人に愛されてきたおにぎりは、令和となった現代でも「ニッポンのソウルフード」としてその存在感を放ち続けている。
お米がおいしい秋、おにぎり専門店で新米おにぎりを堪能してみては?
取材・文/中村実香