「完全オリジナルのマイトンボがいつかほしい」
――甲子園は天然芝ですが、プロ野球球団のフランチャイズ球場はほとんどが人工芝。これについて思うことは?
天然芝のほうが足の負担が軽減されるので、選手はやりやすいと思います。私自身、ケガで競技を諦めた人間なので、もっと天然芝の球場が増えてほしいですね。
甲子園のような黒土は管理が難しいですが、グラウンドキーパー的には一番勉強ができる環境ではないでしょうか。
――イレギュラーが起こると気まずそうですね。
そうですね。自分のならしたところで打球がイレギュラーして野手がエラーしたら、「もしかして私のせい……?」と思ったりします(笑)。
――9月24日、関東地方の大雨で神宮球場の外野の一部が水没したというニュースがありましたが、グラウンドキーパーの目から見てどうでしたか?
人工芝で水たまりになるのを初めて見たので衝撃的でした。あの状態から試合をできるようにした神宮球場のスタッフの方々は本当にすごいと思いました。
――マイトンボは持っていますか?
姫路球場で使っているマイトンボがありますが、甲子園で働く甲子園施設部の方々のマイトンボは木材から発注して自分で組み立てる完全なオリジナルトンボ。
プロ野球選手のバットと一緒で一人ひとり違うので、私もそんなトンボがいつかは欲しいです。
――プロ野球でもグラウンドキーパーをやってみたい?
甲子園ではいつかはできると思います。なので、プライベートで甲子園にプロ野球を観戦しにくることがあったときは、普段テレビで流れることのないグラウンドキーパーの動きを見て勉強しています。
あとは、阪神園芸では以前、ヴィッセル神戸の練習グラウンドの芝生管理をしていたこともあったので、サッカーグラウンドの整備もしてみたいです。
――やっぱり阪神ファン?
そうですね。もともと野球にそこまで興味があったわけではなかったんですけど、西宮市の甲子園出身なので応援するなら阪神。同い年の佐藤輝明選手を応援してます。
――では最後に、裏方としてスポーツを支えることの醍醐味を教えてください。
自分が整えたグラウンドで選手が気持ちよくプレイをしている姿を見られるのが何よりの醍醐味です。
基本的にずっと動き回るので体力的にかなりしんどい部分があるから男性しかできないと思われていますが、私の活動を見て女性でもグラウンド整備をやってみたいという人が増えたらうれしいです。
取材・文/武松佑季