一括りにはできない外国人不良グループ
難民として親子でやってきて神奈川県や兵庫県の特定の団地に暮らして知り合ったグループと、バラバラに来日してSNSでつながったグループとでは、何もかも異なるのは当然だ。
では、両者はまったく相容れないのかといえば、必ずしもそうではないようだ。
インドシナ難民のグループは外国人パブや人材派遣の会社を経営していることがある。こうした人々が、ビザを持っておらず、仕事に困っている北ベトナムの人間を従業員としてつかうことがあるらしい。
また、インドシナ難民のグループは、ベトナム人コミュニティで権力を握っており、日本の暴力団と組んでドラッグの密売や、ベトナム式の賭博をしていたりする。在日外国人のための闇金融を営んでいることもある。こういうところに、北ベトナムの人間が客として来ることもあるそうだ。先の男性はこう言う。
「仲がいいわけじゃないけど、助け合えるところは助け合おうっていう感覚はあると思うよ。日本にはベトナム以外にも、ブラジル人の不良、中国人の不良、ネパール人の不良などいろんな国の不良グループがある。他の国の不良グループとぶつかる時はベトナム人ってことで団結して戦う。近いけど遠い、遠いけど近いって関係なんだよね」
本記事では、ベトナム人不良グループに光を当てたが、他の国のグループについても同じことがいえる。
たとえば、中国からやってきた人たちでも、残留孤児の親に連れられて来日して怒羅権(中国残留孤児2世を中心とした不良グループ)を結成した世代と、1990年代~2000年代に蛇頭の手引きによって不法入国したグループとでは何もかもが異なる。
外国人不良グループといっても、細かく見れば様々な違いがあり、それが時と場合によって対立関係を生んだり、協力関係を築いたりする要素となるのだ。もっとも正規のルートで日本に来て、合法的に働き、きちんとした生活をしている外国人からすれば、彼らの存在は迷惑でしかないだろう。
だが、ニュースで流れる外国人同士のトラブルは、こうした複雑な関係性を踏まえなければ、見えてこないものでもあるのだ。
取材・文/石井光太