南北ベトナムで異なる特徴
彼らは自分を守るために同じような者たちとグループをつくって生活をしたり、仕事をしたりする。そういう者たちが、新たな不良グループになっていく。つまり、日本にはベトナム戦争後に来たインドシナ難民たちの2世や3世の不良グループと、1990年代以降に出稼ぎ目的で来た若い不良グループが2パターンがある。複雑なのは、世代によってグループの性質が異なる点だ。
インドシナ難民の男性は次のように語っていた。
「難民としてやってきたのは南ベトナム出身者だろ。自分たちこそが苦労の末に最初に日本に根を下ろした世代という気持ちがある。だから、新しく出稼ぎでやってきた世代のことをよく思っていない。北と南では文化も違うし、歴史的な溝もあるしね」
第一世代のインドシナ難民にしてみれば、自分たちが汗水流して在日ベトナム人社会を築き、市場を開拓してきたという自負がある。それゆえ、後からやってきて不法滞在で犯罪をくり返すような北ベトナムのグループを快く思わないのだ。
また、文化や歴史の違いも大きい。少々語弊があるかもしれないが、ベトナム戦争時の北ベトナムと南ベトナムといえば、今の北朝鮮と韓国のような関係だ。歳月を経たからといって、異国の地で両者が何の違和感もなく一緒に活動するのは難しいだろう。
「グループとしてのタイプも違うよ。俺たちは同じ団地(難民が多く集まっていた団地)で暮らし、幼馴染のような感じでかかわってきた同士だ。お互いの関係性がすごく強いし、家族以上の絆がある。でも、北ベトナムの奴らはそうじゃない。
SNSで知り合ってすぐにくっついたり離れたりする。盗みとか悪いことをする際も、SNSで呼びかけてパッとくっついて、終わったら解散するみたいな。グループといっても、俺たちと奴らとでは人間関係がぜんぜん違うんだよ」