なぜラーメンは1杯1000円を超えられないのか!?
ラーメン界で言われてきた問題に「1000円の壁」があります。今でこそ、それを打ち破る店が増えてきたものの、ラーメン1杯は1000円を超えられない、超えてはいけないという、長らく日本人に根付いている意識です。物のない時代は、少量のガラと野菜くずが主なスープ材料。それに比べて今は地鶏などの高級素材だったり、使う量が膨大です。
なのになぜ値付けで苦しんでいるのか。
今はコンビニで挽きたてコーヒーが手軽な値段で飲めるようになりました。しかし喫茶店のコーヒー600円に誰も文句は言いませんね。1杯で1時間過ごせるからです。人は時間と見た目、量にはたやすくお金を出しますが、品質にはあまり払いたがりません。基本的にラーメン店は長居しない場所です。
四極化するラーメンのカタチ
よく引き合いに出されるものに「パスタ」があります。ラーメンに対してパスタは高すぎる……というもの。味の前に、パスタは歴史あるイタリア料理。全店、全世界に共通したスタンダードがあり、どの店にも数十種のメニューが用意され、選ぶ自由度があります。それに比べると、ラーメンは自分の好みに合うかどうかのギャンブル性が高い。そしてパスタは、食後にセットのコーヒーを楽しむ時間までも含めた満足度を提供します。
中華においてもそうです。中華料理の専門店では、かなり昔から1000円を超えるラーメンが存在しています。けれど誰も異を唱えません。こちらも様々な定番中華メニューが揃い、仲間や家族で酒を飲んだりして過ごします。つまり、シェアが前提なので単価に固執しないのです。また、焼肉や寿司は、肉、魚などの素材が露骨に見えているため、素人目にも高いのだろうなと感じられます。それに比べて、数多のラーメン店がより多く原価をかけているスープは、その価値・価格が目に見えにくい。これも不利な点です。
こうした理由により「ラーメンは庶民の食べ物なんだから……」という思い込みに長い歳月、支配されているのです。しかしラーメンは、とくに96年組以降、その発展に目を見張るものがあり、味だけでなく内装やサービスまで格段に向上しています。昔からラーメンは二極化すると予測されていましたが、今は「ラーメン専門店」「町中華」「チェーンの激安店」と三極化、もしくは、「先鋭的な高級店」とで四極化しつつあります。
高いラーメンと安いラーメン、それぞれをTPOに合わせて楽しみたいものですね。