想像をかき立てられた警察のリスト
——舞台を佐渡島にした理由は?
島は、出入りの場所が、港しかない。登美子が、そこを見つめて待つ姿が思い浮かびました。そして、「拉致されたのかもしれない」と思える島にしたほうがいいかなと考えて、実際に特定失踪者に認定された方が多く、不審船の発見も多い佐渡島はどうかと。
——失踪者の内面は、どのようにして考えたのでしょう。
全国各地の警察署のホームページに、もう亡くなっていて誰だかわからない「身元不明者」のリストがあるんです。そこに推定年齢と似顔絵、所持品の写真などが載っている。それを見ると「あ、こんなものを持って失踪しているんだ」と想像がかき立てられました。本当にみなさん、身軽なまま亡くなられているんですよね。
——2020年春にクランクイン後、コロナ禍で1年半以上中断されたそうですね。
今回一番力を入れたのは、最後まで撮り終えることだったかなと思います。一度中断したので、もう一回ストップしたら、この映画は完成しないかもしれない。誰ひとりとして感染者を出さないよう、3食とも部屋食をお願いして、東京から新しく人が合流するときは、PCR検査の実施を徹底してもらいました。
——逆境の中で撮ったからこそ、作品が良くなったところは?
再開までに脚本を何度も読み返して、ラストシーンを少し変えたんです。そこは(田中)裕子さんにも「変えて良かった」と言っていただきましたね。