『バッファロー’66』で2回目のブレイク

実は、クリスティーナを一度だけ取材したことがあります。当時、彼女はまだ13〜14歳くらい。『アダムス・ファミリー2』か『キャスパー』か、どちらの映画のプロモーションだったのか昔すぎてうろ覚えなのですが、ひとつだけはっきり覚えているのは、10代の女の子と話している感じがしなかったことです。浮き足立つことなく、スターというより役者というスタンス。落ち着きはらっていて、しっかり者の印象が強かった。
だから、タチの悪い大人の誘惑に流されることなく、コツコツと実績を積み重ねていくことができたのでしょう。

90年代のミューズ、クリスティーナ・リッチが再び『アダムス・ファミリー』の世界へ!? 唯一無二のかわいさをプレイバック_3
『バッファロー’66』ではヴィンセント・ギャロの恋人役を演じた
Everett Collection/amanaimages

そして少女から大人の俳優への転換期に出演したのが、日本でも話題になったヴィンセント・ギャロ監督・脚本・主演作『バッファロー’66』(1998)。当時、18歳。弾けるようなボディと異性を惹きつけるフレッシュな色気、そして役の芯を掴む演技力を駆使して、ギャロに負けないインパクトを残しました。
よく考えてみると、ヴィンセント・ギャロは初監督作だし、メジャースタジオ製作ではないインディーズ映画だし、よくこの映画への出演を決めたなあと思うのですが、やはりクリスティーナと彼女のスタッフ陣は作品を見る目があるのでしょう。この映画でも彼女は高評価を獲得しました。

アカデミー賞候補になったことないってホント?

しかし、不思議なのは、ずっと演技派と言われてきたクリスティーナが主要映画賞と無縁であることです。彼女のキャリアをチェックしてみると、『恋する人魚たち』でデビューしてから2022年に至るまで、それほど間を開けずに映画やテレビに出演しています。
安定した演技と華やかさ、主演、助演どちらでもこなせる彼女は、ショービジネス界の信頼をガッチリと得ているわけですが、クリスティーナが映画の主要賞レースで話題になったのは、1988年製作の『熟れた果実』くらい。
この作品で、ナショナル・ボード・オブ・レビューの最優秀助演女優賞を受賞しましたが、ゴールデン・グローブ賞とインディペンデント・スピリット賞は候補止まり。

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『熟れた果実』では小悪魔な16歳の少女ディディを演じた
Capital Pictures/amanaimag_es

シャーリズ・セロンの相手役を演じた『モンスター』(2003)など、アカデミー賞候補になってもおかしくない演技だったのに。『モンスター』でシャーリズがアカデミー主演女優賞を受賞するほど評価されたのは、相手役のクリスティーナの名演のおかげでもあるわけですよ。
なのに、彼女の名前を見たのは、ラスベガス批評家協会賞くらいで……。もしかしたら子役時代から演技派と言われ続けているので「クリスティーナなら、これくらいできるはず」と、勝手にハードルを上げられているのかもしれません。

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『モンスター』では、実在した連続殺人犯アイリーン(シャーリズ・セロン)が愛するセルビー役(左)を演じた
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クリスティーナが再び『アダムス・ファミリー』の世界へ!

周りが「受賞歴が少ない!」とプンスカしても、本人はどうでもいいと思っていそう。最初の夫(ドラマ『PAN AM/パンナム』で知り合ったスタッフの男性)とは、離婚しましたが、その後、ヘアスタイリストの男性と子連れ再婚。第2子が生まれ、家族4人の幸福な日々をインスタグラムで発信しており、仕事とプライベートの充実ぶりがうかがえます。

また、ファンにとって喜ばしいのは、Netflixシリーズ『ウェンズデー』(ティム・バートン監督/11月23日配信スタート)にクリスティーナが出演すること! 
彼女が『アダムス・ファミリー』の世界に帰ってくるのです。
どのような役なのかはまだわかりませんが、作品を熟知している彼女ですし、『スリーピー・ホロウ』(1999)で組んだティム・バートン監督との再タッグも期待大。クリスティーナ・リッチの新たな魅力が炸裂する作品になっているに違いありません。


文/斎藤香

クリスティーナ・リッチ
1980年2月12日生まれ、アメリカ・カリフォルニア州出身。『恋する人魚たち』(1990)で映画デビュー。主な出演作は『アダムス・ファミリー』(1991)『キャスパー』(1995)『熟れた果実』(1997)『バッファロー’66』(1998)『ラスベガスをやっつけろ』(1998)『スリーピー・ホロウ』(1999)『ペネロピ』(2006)など。