目指すはタクシー業界。全国当たり前にいる存在に
――パリさんご自身は「街にはもう戻れないかもしれない。流しを辞めよう」と思ったことはなかったですか?
酒場が全滅してしまったらどうしようかとは考えました。ただ、そういうピンチのときに“新たな可能性”は出てくるもので、同様に仕事がなくなり困っていた屋形船から、船に乗りながらの流し依頼があったりして、困った業者同士がコラボして乗り切ろうという流れがあったんです。
それをきっかけにして、私自身も「夜の店だけ」に依存しない流しの生き方を真剣に模索するようになりました。
――新たな活動の場所を探す“攻め”に出たわけですね。
はい。そもそも我々流しの仕事は、夜に限る必要も、お店に限る必要も全くなくて、昼でもできるし、他の場所でもできるんですね。
それを具体的な形にしようと考えて、電話営業をかけたり、逆にお話をいただいりして、その結果、お通夜で故人の好きな歌を歌う、キャンプ場でテントを回って歌う、お祭り会場でみんなが飲み食いしているところを回って歌うなど、この2年ほどでいろいろな形を実現することができました。
これからも新たな流しの活躍の場を広げていきたいと思っています。
――どんどん活躍の場が広がって、流しの形そのものがアップデートされていっていますね。
そうですね。30年後ぐらいにはタクシー業界みたいになっているといいですね。タクシーも最初は誰かが勝手に人を乗せて運んでお金をもらう仕事をしていたら、真似する人が増え、最終的に業界やルールができあがっていったと思うんです。
流しもタクシーぐらいメジャーな存在に、そして日本全国、さらに世界にも当たり前にいる存在になりたいですね。
取材・文/廣田喜昭 撮影/井上たろう