「喜んでもらいたい」という“豊かさ”を振りまくのが流し

――え、流し休業状態の時期に逆に流しが増えたんですか⁉

はい。おそらく家にこもり続けた時期に、流しに限らず多くの方がご自身の人生や、本当に自分がやりたいことは何か、を考えられたと思うんですね。

最近、組合に入った方でいうと、「となりのナリト」さんという還暦を過ぎて間もなく会社を引退する男性で、奥さんも孫もいる方がいます。コロナのタイミングで「人前で演奏をしたい」という夢をもう一度思い出したそうです。それで私に連絡をくれたんです。

いよいよ、その方が流しデビューの日を迎えました。一生懸命練習して臨んだわけですが、1人目のお客さんから「心がこもってない」とダメ出しされてしまい、それでもまた自分を奮い立たせて次のお客さんへと向かっていって……挫折と感動の物語がありましたね。

――ドラマがありますね。

はい、こんな言い方をするとアレですが、コロナを機に良いメンバーになったと思うんです。以前は「食べるため」に流しをやる人が多かったのですが、そういう人は強引に営業をかけたりしてトラブルを起こすケースが少なくないんですね。

でも、そういう人達はコロナの休業状態のときに「稼げない」と現場に出なくなり、一方で先ほどのナリトさんのように「人前で歌いたい」「喜んでもらいたい」と考える“豊かな人”が増えました。そうすると、お店やお客さんからも良い声がたくさん私のもとに届くようになったんです。

そんなことを経験して「豊かさを振りまくのが流しだな」と思いました。お客さんは演奏を心から楽しんでいる人についお金を払いたくなるし、その心の純度が魅力なんだと思うんです。だから平成流し組合は「喜んでもらいたい」と考える“豊かな人”だけをメンバーにしていこうと考えています。

「コロナでむしろメンバー増」―流し集団代表が切り拓く、流しの未来_4