コロナで休業状態。それでもオンラインで食べていく道を探るつもりはなかった
――流しの仕事は順調だったということですが、2020年初頭からはじまった「新型コロナウイルス」の感染拡大は流しにはどんな影響がありましたか?
多大な影響がありましたね。私は2014年に『流しの仕事術』(代官山ブックス)という本を出版したことをきっかけに「平成流し組合」という流しグループを作りました。
今は70名ほど在籍しているのですが、流しの我々は「お店ありき」の仕事だったので、お店に合わせるしかありません。緊急事態宣言が出てほとんどのお店が閉まってしまったときは、必然的に流しがやむなく全員休業状態になりした。
――コロナで仕事ができないなかでどうされていたんですか?
ちょうどZOOMが流行ったタイミングだったので、オンラインで演奏したり、会話をしたりする「オンライン流し」をはじめました。
それはライバーやYouTuberのように投げ銭を得ることが目的ではなく、みなさんもずっと家にこもり切りで交流を求めている感じがあったので、それに応えることができたらなという感覚でした。
――それこそライバーのようにオンラインで稼ぐ道もあったと思いますが、そうしなかった理由も気になります。
我々流しは“街や店との関係性で生きている存在”であって、街や店がないオンライン上で稼ぐのは流しとは別の仕事という感覚が今もありますね。
――なるほど。とはいえ現実問題として、オンライン/オフラインの両方で稼げないとなると流しを辞める人がたくさんいたのでは……?
たくさんいますね。じつはコロナを契機に活動するメンバーの顔触れがガラッと入れ替わって、しかも20人ほど新規メンバーが増えたんですよ。