楽しければ楽しいほどその後に…
――実際の香取さんは、想像していたイメージと何かギャップはありましたか?
岸井 いや、お会いしても香取慎吾さんそのものでした。芸能界は個性があってすごいなあって思う人しかいない世界でもありますが、その中でも圧倒的なものを感じました。
香取 おお~。なんか分かんないけどすごい感じ?
岸井 そう。なんかすごいんです。今に至るまで培われてきた歴史が詰まってる感じがして、「エネルギーがある!」って思いました。
香取 ある!(笑)。
――香取さんご自身はそういう自覚はないというか。
香取 いや、あると思ってます(笑)。
岸井 あははは。香取さんのいろんな顔をずっと見てきたからこそ、どこかつかみどころがないというか、特定の「香取さんってこういう人なんだろうな」っていうイメージがなかったんです。でも今回いろいろお話させてもらって、ずっと見てきた方だけど、すごく近くにいる感覚がありました。「何か話さなきゃ!」とかも思わないし、こちらが気負いせずにいられる、すごく自然体な方だなって思いました。
香取 僕が思って欲しい通りです(笑)。
岸井 おお~、よかった(笑)。
香取 ただ、笑顔が溢れる作品の方がもっと打ち解けられたとは思います。お芝居の中では基本的に本音でぶつかり合ってないからね。
岸井 そうですよね。
香取 それでも撮影の合間で喋れたけど、「そろそろ本番」っていう空気になると役的に距離を取った方がいいと思いましたから。
岸井 私としては香取さんと、出会いから結婚4年目の夫婦喧嘩までを通して演じられたのはとても楽しかったです。風で飛ばされるビニール袋を追いかけるシーンを最初の方に撮ったんですが、大人になると一生懸命走ることってあまりないですよね。でも、私は大人になっても一生懸命ビニール袋を追いかけたいタイプ(笑)。最初にああやって一緒に走り回れたのは楽しかったです。そこで役としての土台もできた気がして、良かったなと思います。
香取 僕もあのシーンは楽しかったですけど、ちょっと辛かった(笑)。僕は愛を持って生きていたい人なので、この楽しいシーンの後にあんなにお互いふさぎ込むようになっちゃうんだっていうのが本当に辛くて。楽しいシーンは回想だから分量としては少ないんだけど、そのシーンが楽しければ楽しいほど辛かったです(笑)。