ロックと神話が交わる場所

特別な神事や、神話の舞台を訪れる旅だけではなく、相川はふだんの生活から日本の神々を大事にしている。

「毎日、子どもとウォーキングしていて、その時に氏神様にはなるべく行くようにしています。そこで『今日はこんなことがありました』って報告したり」

また、〝神話の舞台に誰といっしょに行くか〟というテーマの時には、こんな話をしていたのが印象深い。

「私はよく家族で行くんですけど、子どもにカメラを任せるとおもしろいですよ。自分は自分の身長から上のものしか見ていないんですが、子どもは自分だったらそんなとこを見ないなっていうところを見てて、『こんな花咲いてたよ』とか『ここに道があるよ』とか、いろいろ教えてくれるので。子どもといっしょに行くのは好きですね」

家族ぐるみで自然に神々と付き合っている相川家の体験談は、一服の清涼剤のように心地よい。さて、母であり、学生であるとともに、アーティストである彼女。日本神話への想いが作品にどういかされてゆくかが気になるところだ。イベント後、筆者の質問に対し彼女は次のように語った。

「私はロック歌手ですけど、ロックをやりたい気持ちと、神話的な、静かな世界を歌いたい気持ちと、ふたつの世界が自分の中に存在しています。10年前、3・11の後に出した『今事記』(こんじき)という、全曲を私が作詞したアルバムからその方向性がスタートしていて、このアルバムにはタカミムスビ、カミムスビが登場する『オトヒメ』という曲も入っています。

最近のレコーディングでも『今事記』に近い世界、神話、万葉歌に近い世界を作ろうとしていまして、ロックと神話の二刀流でこれからもやっていこうと思っています。昔、春日大社の葉室宮司さんに、祝詞(のりと)や大祓(おおはらえ)をロックで歌ってみたら!?と言われたことが懐かしいです(笑)」

ちなみにこの原稿は「今事記」を聴きながら書いた。相川がここで挙げた『オトヒメ』はもちろん、『ヒカリノミ』『ことのは』など素晴らしい作品がそろっている。中でも『ことのは』は神話や和歌が好きな人におすすめだ。