スケーターとして不世出の存在
「(髙橋)大輔は頭で考えるよりも、体で(スケートを)理解しているっていうか。幼いい頃から”こういうスケーティングをしたい”という彼なりの理想があって、それを実現する天性も努力もありました」
2021年の全日本選手権で急遽、アイスダンスでもリンクサイドに立った長光コーチはシングル時代以来の共闘だったが、その言葉が髙橋のスケート人生を示していた。
「アイスダンスに転向した時も別競技だし、関係者が聞いたら鼻で笑う挑戦だったかもしれません。でも、彼に関わったことがある人は、“いけるかもね”と思ったはずで。大口は叩かないのに、何かやるって思わせるものを持っているのは凄いなって思います。『だって、大輔やもん』って(笑)。彼は夢を見せてくれるんです」
髙橋自身が夢を見ているからこそ、人々にも夢を見させられる。その波動が広がり、心を震わせる物語になる。労苦は甚大のはずだが、子供が夢中になるように楽しげなだけに、そこに生じるエネルギーは無尽蔵に近い。
「スケートを生きる」
髙橋ほど、その表現が似合う選手はいない。優しく柔らかく、真っ直ぐな決意。それは人々の胸を揺さぶる光芒となり、彼自身が行く道も照らすのだ。
写真/AFLO