そこはかとない色気を感じる『たゆたう琥珀』
3作目は、Twitterのプロモーションで出会ったカジス先生の商業デビューコミックス『たゆたう琥珀』です。絵柄と手や首筋の描き方から醸し出される色気に惹かれて買ったのですが、本当に表現が素晴らしかった……!
デザイン事務所に入社したゲイの主人公・的井(晋太郎)くんとノンケの先輩・中野(桔平)さんが両想いになるまでのオフィスラブストーリーです。最近は社会現象になっているオフィスBLドラマが多いですが、『たゆたう琥珀』も多くの人がハマりやすい内容だと思っています。
カジス先生はシンプルな絵柄の中に色気を閉じ込めるのがとにかくお上手なんですよ。キャラクターの目線、手の置き方、後姿……口元や目元だけしか描いていないコマなど、すべてに意味を感じてしまう。
中でも先輩が電話を受けているシーンが印象に残っています。表情が描かれているコマのあと、後姿のコマが描かれているのですが、「今こういう感じで口元が動いているんだろうな」と表情が想像できる。そんな表現が詰め込まれているので、深く考えずとも思考が誘導されていく作品です。
ストーリー重視なため、BL作品には珍しく性描写がないのも良くて。直接的な描写がなくても、首筋の表現や相手の耳を触る動作だけで、そこはかとない色気を感じる。そこで十分キュンを味わえるんですよ。お話も素敵で登場人物も魅力的。「性描写が苦手だけどBLは好き」という方にもオススメです。