世界に挑み続ける国産家具メーカー
あのApple社を魅了した“日本製の椅子”があることをご存じだろうか。ITやデザインの分野に興味を持っている人ならば、「HIROSHIMA(ひろしま)」という名の高級木製アームチェアについて、一度は耳にしたことがあるかもしれない。
ミニマルながらも、繊細かつ滑らかな曲線を描いたそのフォルムは、一度目にし、腰掛けた人に、強烈な印象を残すものだ。この世界的に有名な椅子を作ったのが、広島の老舗家具メーカー「マルニ木工」である。
Appleの本社「Apple Park」にHIROSHIMAアームチェアが採用されたことが話題になったのは、2017年のこと。あれから5年を経た2022年現在、同社には新しい風が吹いている。
最近の大きなトピックは、2022年にデンマークの著名デザイナーであるセシリエ・マンツ氏とのコラボレーションを開始したことだ。同年5月には、同氏デザインによる新プロダクト「EN」シリーズをラインナップに追加。さらに6月上旬には、その新製品を引き連れ、世界的なパンデミックを乗り越えながら開催された「ミラノサローネ国際家具見本市」へ3年ぶりに出展。木製家具のラインナップ「マルニコレクション」の新たな姿をグローバルに向けてお披露目した。
マルニコレクションについては、これまでも深澤直人氏やジャスパー・モリソン氏といった世界的なプロダクトデザイナーと協働で行われてきた。先述のHIROSHIMAアームチェアも、深澤直人氏によってデザインされたもの。ここに、セシリエ・マンツ氏による柔らかい色使いが加わったことで、マルニ木工としても、新時代への舵を切ったことがわかる。
HIROSHIMAアームチェアが世界的に長く評価され、確かな成功を収める一方、マルニ木工はこうした新しい挑戦を続けている。同社が世界を相手に挑めているのは何故なのか。そして、日本のモノづくりの課題とは何なのか。株式会社マルニ木工の代表取締役社長である山中洋(やまなか・ひろし)氏に話を伺った。