ハマるポイント1:壊される無意識な“固定観念”
常に読み手の予想を裏切ってくる本作だが、1話目から読者の中に無意識にある“固定観念”を壊してくる。
例えば、下呂の祖母が、下呂か下呂の妹を毒使いの家を継がせようとするシーン。そこで下呂は恋人がいる妹に次のような言葉をかける。
「お前も彼女と暮せばいいんだよ」「大切だと思える誰かと連れ添えるのは死ぬほど奇跡みたいなことだから、お前は彼女と共に生きるべきだ」と。
下呂のセリフと妹と恋人の2ショット写真により、妹の恋人が“彼女”であることが明らかになる、このシーン。
妹に彼女がいることを特別なことのように描くのではなく、サラリと描かれている。意識的に取り上げないことこそ、多様性を受け入れるということなのではないかとハッとさせられた。
また、結婚詐欺師として数々の男性を虜にしてきたヒロイン・城崎のビジュアルと、出会ったばかりの下呂の心を短時間で掴み「俺に…惚れているのか…!?」と勘違いさせるその言動には見習いたいものがある。
しかし、1話の最後で城崎は「私、男だし」と衝撃の告白!
ヴィジュアルや言動から、城崎を“女性”だと思い込んでいた読者は筆者だけじゃないはずだ。
このように当たり前の予想を、何の気なしに壊してくる描写こそ、本作にハマってしまう理由の1つだろう。